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「誰に対しても平等に、最高のものを」美智子さまから雅子さまに受け継がれた“おもてなし”とは?

天皇、皇后両陛下のお気持ちが凝縮された接遇

2019/08/17

genre : ニュース, 社会

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花束に直筆の言葉を添えて……

 美智子上皇后が皇太子妃、皇后だったとき、来日した外国の国賓の滞在先には、必ず皇太子妃(皇后)の名前でバラの花束が贈られた。バラは「プリンセス・ミチコ」。皇太子妃時代の1966年、英国のディクソン社から贈られたバラで、日本の園芸家によって育て、増やされてきた。芯は黄色で、軽くウエーブが入った上品な朱色の花びらが半八重咲きになる。季節外れの時期にも、その温室ものが贈られた。

旧正田邸跡地に造られた公園「ねむの木の庭」にも「プリンセス・ミチコ」(右の赤い花)が植えられている ©時事通信社

 花束には、日本の滞在が楽しいものになるようにとの思いを込めた直筆の温かい言葉を記したカードが添えられ、これは賓客を「ここまで心遣いをしてくれている」との思いにさせたようだ。フランスの故ミッテラン大統領は1994年に先の天皇、皇后両陛下が国賓で訪仏した折りの歓迎晩餐会で、「私が訪日する度に皇后がお示しになった温かいお心遣いは忘れることができません」とわざわざスピーチで述べている。

 このもてなしは令和になってから雅子皇后に受け継がれた。5月下旬、トランプ米大統領夫妻が来日した時は、皇后の名前で宿泊先のパレスホテルのスイートルームに、言葉を添えた花束が贈られた。もちろん「プリンセス・ミチコ」とはいかないから、何種類かの花がアレンジされた。

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宮内庁提供

美智子さまの接遇を引き継いだ雅子さま

 6月末に大阪で持たれたG20首脳会議に合わせて開かれた、女性の活躍について議論する首脳特別イベントにオランダのマキシマ王妃が出席した際も、滞在先のホテルの部屋に、やはり皇后から花束が贈られた。王妃は公賓での来日で国賓ではなかったが、皇室とオランダ王室の親密な交流を考慮したものと思われる。マキシマ王妃はこの心遣いに喜ばれたのだろう、電話でお礼を述べると共に、天皇、皇后と近況について言葉を交わした。

©JMPA

 美智子さまの接遇を引き継いだ雅子さま。そのうち「エンプレス(皇后)・マサコ」という新種のバラが園芸家から贈られるかもしれない。
 

「誰に対しても平等に、最高のものを」美智子さまから雅子さまに受け継がれた“おもてなし”とは?

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