トランプ米大統領が新天皇、皇后の最初の賓客として来日した時、私は幾つかのメディアから同じような内容の取材をうけた。「両陛下はどのような特別な料理でもてなすのでしょう」と。これに対する私の答えは「特別な料理は出しません。いつも国賓に出しているものと同じです」というものだった。

トランプ大統領夫妻を接遇される天皇皇后両陛下 ©JMPA

 取材者は「米大統領だからといって特別な料理を出さないのですか?」と拍子抜けの体だった。「どの賓客に対しても等しく、最高のものを出すのが皇室のルールです。トランプ大統領だからといってこれまでとは違ったものを出すことはあり得ません」と、私は続けて答えた。

どの国も区別せず、平等に、最高の内容で遇する

 どの国も差別しないという皇室のもてなしの原則は、先の天皇、皇后、さらに昭和天皇、香淳皇后の時から堅持されてきた。これは新天皇、皇后にも引き継がれている。

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ルクセンブルク大公歓迎の宮中晩餐会(2017年) 宮内庁提供

 どの国も区別せず、平等に、最高の内容で遇するという姿勢は外交の世界では稀有なことである。米ホワイトハウス、英バッキンガム宮殿、はたまた仏エリゼ宮といった元首の館の晩餐会では、国の大小や、自国と賓客の国との関係性によって、もてなしを変えるのはふつうのことだ。自国にとって重要な国であればもてなしのレベルを高くし、さほど重要でなければそこそこのもてなしですますのである。

 だが、国によって区別しない皇室はこうした外交、政治の論理から一線を引いている。「皇室は政治とは関わらないとの姿勢は、このもてなしをとっても明らかです」と宮内庁の関係者は語る。