黒木華(はる)が主演のドラマを観ることが出来るという僥倖(ぎょうこう)。ながい梅雨寒の後に、いきなり猛暑日がやってきて、今年の夏はクソ最低だけど、『凪(なぎ)のお暇(いとま)』に出会えたって、ツイテるよ。

第42回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞した黒木華 ©文藝春秋

 仕事も恋愛も、その場の空気を読み過ぎて、まわりからいいように利用され、こき使われてきた大島凪(黒木華)は、負荷に耐え切れず過呼吸でダウン、恋人と会社を捨てて、郊外の安アパートに転居する。

 人生のリセットとか、断捨離とか御大層な選択じゃなくって、いままで無理しすぎて心も身体もヨレヨレだから、とりあえずしばし“お暇”をいただこうと、その程度の感じかな。

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 アフロの凪ちゃん、可愛いよ。草食ヒッピーみたいな感じかな。生まれつき癖っ毛だったのに、母親や恋人の慎二(高橋一生)にあわせて、出勤前に一時間早く起き、髪をストレートにしてた凪ちゃん。そりゃ過呼吸にもなるわ。

 元カレの慎二が最悪の奴でね。その場の空気を素早く読んで笑顔を作り、仕事も如才なくこなす。その反動で、凪に対してはゴーマンの限りをつくすというとんでもない俺様野郎だ。

 高橋一生は、こういう裏表ある役をやらせると、もう絶妙に巧い。でも好青年の顔が、一瞬で腹黒く変貌するシーンを何度かみると、ややペラく感じてくる。俺なら、こんな役、簡単に出来るよ。劇中の慎二と高橋がダブッてみえる。

凪の元彼を演じる高橋一生 ©文藝春秋

 郊外のボロいアパートに住む隣人が、誰も程良く個性的だ。自販機の下から釣り銭を拾う“おつり漁りばばあ”の緑さんを三田佳子が演じていてびっくり。部屋では優雅な生活を営む緑さんをクールに愛らしく演じる三田さん、凄いよ。

 隣室の派手なタトゥーをいれたパリピーの安良城ゴン(中村倫也)が、慎二とは真逆のキャラだが、ヤバサにかけては負けてない。

 ポワーンと自然体で「凪ちゃんって可愛い」とかいって髪を照れずに撫でるなんてことが出来ちゃう。こういうタイプ初めてで、凪ちゃんドキドキ。

 一方の最低・元カレは、凪に去られた後で、彼女への愛にやっと気づき、今度はストーカーまがいの行動に出る。付きまとった挙句に、凪にビンタされて、彼女の住む立川駅前で号泣する慎二の姿に、(あれ、こいつって、実は不器用で、根はいい奴?)と、印象は逆転する。毎回ラストで号泣する姿は、さすが一生。

原作はコナリミサトの漫画

 怪し気なカルト商品を売りつけられたのが縁で友達になった坂本龍子(市川実日子[みかこ])も、気持ちいい存在感がたっぷりだ。ヒロインの女友達を演じたら、彼女の右に出る者なしだ。

 第三話でゴンに抱かれた凪はどうなる。ゴンはメンヘラ製造機と呼ばれる女たらしだ。そして慎二は素直に愛を伝えられるか。今季、文句なしの最高傑作。

INFORMATION

『凪のお暇』
TBS系 金 22:00~
https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/