全裸の聖者が雄叫びをあげ、ギャングが拳銃を握り、サーカス団員が宙を舞う——。
 写真家・名越啓介が13年に渡って突っ込んだ“インドの異界”に迫った書籍『バガボンド インド・クンブメーラ 聖者の疾走』(イースト・プレス刊)が話題を呼んでいる。
 ジャーナリスト/編集者として、世界の辺境を歩き続ける丸山ゴンザレスを対談相手に迎えて、存分に語り合ってもらった。

名越啓介さん(写真左)と丸山ゴンザレスさん(写真右)。

丸山 人から聞いた噂なので間違ってたらごめんなさいですが、名越さんって人が撃たれた時に嬉々として最前線に足を向けたらしいじゃないですか?

名越 いつのことだろう? それはちょっと記憶にないですね。ちょっと違うけど、アメリカでチカーノを撮影した時のことかな? あの時は目の前で人が刺されて、血がぶわぁーッと噴き出して。

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丸山 その噂を聞いたとき、似たような動きをする人がいるなって。俺も何か起きると、一番前に行っちゃう性質なんで。

『バガボンド インド・クンブメーラ 聖者の疾走』(イースト・プレス刊)

名越 自分の場合は勢いに任せて前のめりにいくタイプじゃなくて、知らず知らずのうちに最前線にいることがたまにあるくらい。それに体格が小柄だから、スルスルっと入り込んでいけちゃう。丸山さんは大変ですよね、大柄で目立つやないですか?

丸山 堂々と行きますよ。7月に香港のデモを現地取材して、気づいたら市庁舎のガラスを割っている学生のすぐ横にいました。元々の性格で最前線にいるのが好きなんですよ。こればかりは変えようがないというか。