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「熱血硬派くにおくん」の影響も……80年代ファミコンへの“偏愛”から生まれた「海外インディーゲーム」の正体

2019/09/23
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日本の学校や商店などをドット絵で再現

 ロシアでファミコンハードの海賊版Dendyの販売がスタートしたのは日本の10年遅れとなる92年。彼も日本人より少し遅れてファミコンのカルチャーに触れた世代だ。日本語はわからないがストーリーを想像しながら『ダウンタウン熱血物語』を夢中で遊んでいたとゲーマー向けメディア「Game*Spark」のインタビューで語っている。

『The friends of Ringo Ishikawa』は日本の学校や商店などがドット絵で再現された『ダウンタウン熱血物語』を思わせるサイドビューのフィールド上で、くにおっぽい石河倫吾となり生活していくゲームだ。

どういった生活を送るかはプレイヤーの自由。戦わず勉強に励むことも可能だ

 世界を自由に動きまわりながら探索するオープンワールド型のゲームのため、他校の生徒とけんかするのも、勉強やトレーニングに励むのもプレイヤーの自由。日常の生活の中でパラメーターを上げ、町を探索しながらストーリーを進めていく。日常の生活の中でイベントが発生し、物語が進行するが、情報が少なく、プレイヤーは手探りで学んでいくことになる。ゲームの難易度は少し高めなため、誰にでもおすすめできるものではないが、実際に生活しているような感覚になる作り込まれた世界は一度体験する価値があるだろう。

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失業中の父親が「不良少年」キャラクターアートを担当

 米テック系メディア「The Verge」のインタビュー記事によると、このゲームに登場する不良少年たちのキャラクターアートを手掛けたのは、なんと失業中だった彼の父親だという。

 当時58歳だった父親はマイクロソフトのPaintを使っていちからピクセルアートを学び、それぞれのアクションのポーズをとった息子の写真を見ながらキャラクターフレームを仕上げた。

父親が描いた不良たち

 このアットホームな開発秘話からもわかるように、ゲーム作りの敷居は数年前と比べてかなり低くなっている。やる気と時間、それにパソコンさえあればUnityなどの無料開発ツールを使うことで誰でもゲームを作ることが可能なのだ。

 海を渡ったファミコンソフトが、ロシアで熱狂的なファンを育て、彼が作ったインディーゲームが任天堂の最新ハードでリリースされる。そんなゲームマニアの妄想のような物語が現実となったのだ。

 ちなみにNintendo Switchでオンラインプレイをする際に加入が必要なNintendo Switch Onlineではファミコンソフトを無料で遊べる『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』というサービスを行なっている。そこで『ダウンタウン熱血物語』を遊ぶことができるため、2つのゲームを比較しながらプレイすることも可能だ。