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「熱血硬派くにおくん」の影響も……80年代ファミコンへの“偏愛”から生まれた「海外インディーゲーム」の正体

2019/09/23
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自宅を抵当に入れてゲームを作ったカナダ人兄弟


 今年4月にNintendo Switch版がリリースされた『Cuphead』も日本のレトロゲームへのオマージュがちりばめられたゲームだ。1930年代のカートゥーン調のアニメがそのままゲームになったようなこのタイトルの開発にカナダのモルデンハウアー兄弟は7年の歳月を費やした。

アニメのようなゲーム画面

 2人は建設作業員として働きながら、2010年にゲーム作りをスタートさせた。ゲーム内のイラストはすべて手描き。セル画は、当時のアニメーターたちが使っていたものに近いツールを使って描き、背景は水彩で色付けして仕上げていった。

 当初はボス戦のみのステージ構成だったが、開発途中のゲームに触れたファンの声に応えるため、横スクロールのステージを追加することを決断する。そのアニメーションを描く職人を雇う金を確保するため自宅を抵当に入れた。

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 異常なほどの情熱を注ぎ、発売延期を重ねた末、2017年に完成にこぎ着けたPC版とXbox One版は発売後2カ月で200万本を売り上げるヒットとなった。

 4万5000枚以上のセル画を使い、1フレームずつ描かれたキャラクターたちが表情豊かにオーバーアクションな1930年代のアニメーション的な動きでゲーム画面を動きまわる。

 ゲーム内容は彼らが子供の頃に夢中で遊んで着想を得たスーパーファミコンの『魂斗羅スピリッツ』、『ロックマンX』、メガドライブソフトの『ガンスターヒーローズ』などと同じくゲームオーバーを繰り返し、少しずつ敵の動きを攻略しながら進んで行く骨太なアクションゲームとなっている。

見た目とは裏腹な高難度

『Cuphead』はNintendo Switchへの移植に合わせて日本語版が制作された。ゲームの雰囲気に合わせてステージ名の日本語フォントも、それぞれステージごとに手書き文字で新たに制作されるなど、細部のローカライズに関しても妥協のない仕上がりとなっている。

ゲーム中のステージタイトルのカリグラフィは1930年代のカートゥーンにインスパイアされた同作に合わせ、その時期の日本アニメを参考に制作された

 ローカライズを得意とする日本の企業が開発に参加することで日本語版へのクオリティが格段に上がったことも現在の日本のインディーゲームシーンの盛り上がりを語る上で外せない要素といえるだろう。