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「熱血硬派くにおくん」の影響も……80年代ファミコンへの“偏愛”から生まれた「海外インディーゲーム」の正体

2019/09/23
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ディストピアを描く南米・ベネズエラの2人組


 世界各国の開発者たちが制作したインディーゲームは、世界観の設定やストーリー展開、なにげない主人公たちの会話の中に、開発者たちの価値観や文化を垣間見ることができる。

 今年5月にNintendo Switch版がリリースされた『VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)』は、南米、ベネズエラ出身の2人組、Sukeban Games(スケバンゲームズ)が制作した「サイバーパンクバーテンダーアドベンチャーゲーム」だ。

 PC-98風のドット絵で描かれるサイバーパンク調の世界を舞台に、バーテンダーの主人公とクセのある客との会話によって物語は進行する。話の合間に客のリクエストを受けて作るカクテルによってストーリーは変化していく。

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ゲーム画面。プレイヤーはバーテンダーとなりお客の求める酒を出す

 開発者が日本の文化をこよなく愛していることは、その会社名からも窺えるが、作中にちりばめられた日本のアニメ、ゲーム文化に対するオマージュからもその愛情が伝わってくる。

 しかし、世界観の設定に関しては、彼らの生まれ育ったベネズエラの現実が色濃く反映されている。ゲーム内でスマホを使って、匿名掲示板やニュースサイトを閲覧できるのだが、そこで語られる主人公たちが暮らす腐敗した政府と大企業が牛耳る都市・グリッチシティの情勢は、政情が不安定で人道危機が続くベネズエラの現状そのものだ。

帰宅して自室でスマホを見る主人公
スーパーの棚にはSOLD-OUTの札が貼られている

 世界有数のインフレ率。暴力犯罪の蔓延するディストピアで夢を持って生きる人々。日常と死が隣り合わせの都市・グリッチシティは、日本のアニメとゲームが大好きな2人の青年にとっての現実でもあるのだ。