振り飛車党の今のエース戦法は?
――10年前から見て、振り飛車党のエース戦法の移り変わりはどうですか。
黒沢 先手番だと石田流と中飛車、後手番はゴキゲン中飛車と角交換振り飛車。それは、当時もいまも変わっていません。でも、居飛車側の対策が進み、ここ数年はノーマルな振り飛車(角道を止める昔ながらの振り飛車で、2000年代は減少していた)をやらざるをえなくなってきました。
――振り飛車への対策が進んだ背景は?
黒沢 やっぱり、ソフトの影響もありますかね。
都成 ずっと互角で振り飛車もやれると思っていた局面が、ソフトに数字で不利と出され、具体的な手順を示されますから。
黒沢 持久戦より、急戦の対策がきつくなってきた印象です。石田流だと、ここ1、2年は右四間飛車の急戦(A、B図)が強敵です。
――急戦は同じ形になりやすく、ソフトで研究すればハメやすいですもんね。
黒沢 先手は石田流じゃなくて、初手▲7八飛(三間飛車)や先手中飛車が増えています。初手▲7八飛は△8四歩を突かせるのが大きい(C図、D図)。これなら石田流と違って、飛車先を省略されたまま右四間飛車にされないですから。初手から大変な時代になりました。
「ソフトもいってたし」を持ち出されると……(笑)
――ソフトの研究を警戒しながら、作戦を決めないといけない時代?
黒沢 そうです。でも、振り飛車がやることは、そんなに変わっていない。初手で変化はあれど、感覚の違いはない。居飛車が変わってきたので、それに対応しているのが現状でしょう。例えば、居飛車側から端攻めする組み立てが増えました。
――端攻めは終盤の手筋。それを急戦の研究に組み込み、一気にリードを奪う作戦が増えたんですね。
都成 振り飛車で先後の差は大きい。後手だとゴキゲン中飛車がきつくなってきました。
――ゴキゲン中飛車に対し、居飛車は超速▲3七銀の急戦がほとんどです。急戦で変化の余地をなくして、「私がいいでしょう。ソフトもいってたし」と攻めてこられたら、きついですよね。
都成 ソフトもいってたし。それを持ち出されると……(笑)。
黒沢 まあ、いわれるのも慣れてきましたけど(笑)。
――相手が使っていると聞いただけでも、研究にハマりそうで嫌ですよねぇ。
都成 そうなんですよ! 奨励会三段もソフトを使っていて、右見ても左見ても、同じ局面とかあるらしい。でも、プロだと半分ぐらいは使っていないと思います。