――では、次は黒沢五段から都成将棋をお願いします。
黒沢 新手や新構想が多いオールラウンダーで、色々な将棋が指せるのがうらやましいです。一手一手が丁寧ですけど、序盤型というよりは中終盤型ですかね。
都成 序盤でいろいろやるけど、結構うまくいかないから(笑)。
――都成五段は何で色んな戦型で新手を指せるんでしょう。
都成 相居飛車で前例をめちゃくちゃ覚えて、細かいところを研究する。これが自分に向いていないからです。せっかく研究しても、よく忘れちゃう。それで少し変化する手を考えています。力戦派(定跡形ではない戦いを好むタイプ)なんですよ。
黒沢 その場で考えるタイプじゃなくて、事前準備がある力戦派ですね。
都成 相手を見て作戦を考えるスタイルは、プロになっても変わっていないと思います。
将棋ソフトは使っている?
――振り飛車の研究で大事にしていることは何ですか?
都成 突き詰め過ぎないこと。細かい手の損得を気にするよりも、戦法のツボを理解するのが大事だと思います。
――いまはソフトで深く研究したり、評価値(ソフトが形勢判断を数値で表す)を気にする人もいます。
※補足※
ソフトごとに評価値の計算方法は違い、人間とソフトの指しやすさ、読み筋や大局観にはズレがあるケースが多い。ソフトと人間の形成判断が一致する目安として、評価値がプラス300~400点ぐらいなら有利、600~800点ぐらいになれば優勢といえる。
都成 自分はソフトを使っていません。めちゃくちゃ依存しようとした時もありますが、使い過ぎると飛車を振れなくなると思いますよ。特に振り飛車は人間とソフトの感覚にずれがあり、300点ぐらいは関係ないでしょう。数字信者になっちゃうと「マイナス200になったら、もう無理無理」となる(笑)。気持ちはもちろん分かります。ただ、それなら居飛車をやったほうがいいかな。定跡が細かいから何十点の世界で勝負できるし、0(互角の数値)とかよく出るでしょう。
――黒沢五段はどうでしょう。
黒沢 互角ならいいので、研究は突き詰めないです。あと、悪くなっても粘れるように、相手より玉が堅い形を評価します。
私もソフトを使っていないです。人を通して分かるからで、研究会でソフトを使っている相手の指し手を見れば、ソフトの考えを把握できます。
……でも、そろそろ使わないとだめですかね。後手番の振り飛車に自信がなくなってきて、いい勝負になる順をひとつは見つけたい。自分で考え出せればいいんですけど、難しいところもありますし、1回指すと相手に研究されてしまうので。