「常々、『自信をもって指せ』と師匠に言われていました」
最終結果は以下のようになった。
(11)渡辺和史 16勝2敗(昇段決定)
(1)石川優太 13勝5敗(昇段決定)
(14)古賀悠聖 13勝5敗(次点獲得)
1位通過の渡辺が棋士番号319、2位の石川が棋士番号320の棋士として10月にデビューする。報道陣による囲み取材が渡辺、石川の順に行われた。その内容を紹介する。まずは1位の渡辺から。
「前節で昇段を決めた時は実感が湧かず、ホッとしたというのが一番の感想です。今日も自然な気持ちでいました。16勝2敗という結果は実力からしたら出来すぎで、信じられない気持ちです。三段リーグ12期はあっという間で、気づいたら年齢制限が迫り、焦る気持ちもありました。一番印象に残るのは1勝17敗だった1期目で、リーグが始まってしばらくは何とかなるという甘い考えでしたが、指せば指す程負けて、奨励会に行くのが怖くなっていました。次のリーグも1勝5敗のスタートで、二段降段を覚悟していましたが、師匠(豊川孝弘七段)をはじめお世話になった方々に『君は若いのでまだいくらでも先がある』と激励を受けて、吹っ切れました」
今期の好成績については、「以前とで特に違うこともありませんが、今期は自信を持って指せました。常々、『自信をもって指せ』と師匠に言われていました。当初は根拠のある自信ではありませんでしたが(笑)、自身初めてとなる4連勝スタートを決めた辺りから、自信が持てました。あと、体調を整えることに気をつけており、コンディションの維持はできていたと思います」と語った。
そして「まだ大きなことは言えませんが、もっと努力して、コンスタントにトップ棋士と当たれるようになりたいです」と、プロとしての目標を挙げた。
「藤井さんが初段のときにネット将棋で」
続いて石川は「(在籍した)13期の三段リーグを振り返ってみても、ほとんど昇段争いに絡めず、長いというより、ただ時間が過ぎていくだけという感じでした。3年半前のあとは前期まで勝ち越しもないので、自分が弱かっただけです。今期上がれた理由はよくわかりません。自分で変えた、変わったというところも思い当たりません。最後詰みが見えるまでプロになれるとは思っていませんでしたが、せっかくなので、藤井さん(聡太七段)とは一局でも多く当たれるように、頑張りたいですね」と語る。
実は石川と藤井は一時期、よく将棋を指していたという。
「ネット将棋で、藤井さんが初段の時に縁があって始めました。始めて2~3局は自分の方が強いと思っていましたが、アッという間に抜かされて藤井さんが四段に上がった時には相当に勝てなくなっていましたね。それからは藤井さんも忙しくなると思ったので。その頃までです」
今後の目標を問われると、しばらく沈黙したのちに「まだそこまでの棋力がないので、タイトル獲得などの形ある目標については考えていませんが、私は対抗形(居飛車対振り飛車の戦型)が好きなので、その中終盤をファンの方に見てもらいたいです」と意気込む。
そして、得意戦法については、「1年ほど前から連投している三間飛車です。何度も指しているとリーグの相手に手の内がばれますが、それでもいいと思うくらい面白い戦型ですね。面白さの理由を聞かれると難しいのですが。山本博志さん(四段)の三間飛車を参考にしています」と語った。
囲み取材が終わった後は、恒例となっている打ち上げが将棋会館そばの焼き肉店で行われ、両新四段の他、戦友ともいうべき三段陣も参加した。まもなく石川は地元である関西へ帰り、そして渡辺は関係者が準備して待っている、二次会の場へ向かう。かくして「三段リーグの一番長い日」は終わった。
写真=相崎修司