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“立ちそばの聖地”東京・板橋 常連客が閉店する老舗そばを救った話

2019/10/01
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「納豆、サバ缶、玉子、ねぎ」を混ぜる?

 ほどなくして、温かいそばつゆに茹で上がったそばが釜上げ風に泳いだどんぶりと、納豆、サバ缶、玉子、ねぎなどが入ったどんぶりと返しが登場した。

 納豆、サバ缶、玉子などを混ぜて、返しをかける。それに釜上げからそばをひっぱり出してつけて食べるという趣向である。

「ひっぱりそば」は温かいそばつゆに茹で上がったそばが釜上げ風に泳いだどんぶりと、納豆、サバ缶、玉子、ねぎなどが入ったどんぶりと返しが登場
納豆、サバ缶、玉子などを混ぜて、返しをかけ、それに釜上げからそばをひっぱり出してつけて食べる

 本来はうどんだろうが、サバ缶と納豆とそばがこんなにも合うとは正直、驚いた。これは元気がでそうなメニューであり、数多の立ち食いそば屋ではお目にかかれない「さかうえ」オリジナルである。

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「さかうえ」は「おくちゃん」の味を引き継いだ形だが、時代が変わると環境も変わるし、味を守るだけではなく進化させることも必要だと店主の中島さんはいう。

店主の中島斗三之さんはご夫婦で切り盛している。味の進化にも余念がない

 天ぷらは仕入れだが、「おくちゃん」の時の仕入れ先は廃業し、同じクオリティの天ぷらの仕入れ先を探すのも苦労したそうだ。

 そんな中でも、出汁を芳醇にしたつゆを提供したり、「ひっぱりうどん」や「もずくそば」などの新メニューを考案するところは「さかうえ」の努力の賜物だろう。

消費税10%はどうする?

 最後に、10月1日からの消費税UPの対応を聞いてみた。仕入れ先が前から値上げをしており、やはり少しだけ値上げしないとならないだろうとのことだった。

 大衆そば業界は後継者問題や廃業のニュースが最近多い。「さかうえ」の味がまだまだこれからも堪能できることはうれしい限りである。

昼時はいつも常連さん達で一杯だ

 あのお父さんと一緒に食べに来た小学生の娘さんや自転車に乗ってきた3人組の少年達がいつか大人になった時に、ふと、「さかうえ」でそばを食べたことを思い出すこともあるだろう。その時のおいしかった記憶が人生に少しだけ彩りを与えることもあると思う。

 また訪問しようと思う。

志村坂上の一里塚は立派である

INFORMATION

さかうえ

住所   東京都板橋区志村1-35-10

営業時間 火~日8:30~17:00

定休日  月

“立ちそばの聖地”東京・板橋 常連客が閉店する老舗そばを救った話

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