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経験者のほうが「答え」を求めている
たしかに年齢別データをみると、1940年生まれの同性愛経験率は男性が2%で、女性はその半分程度だったのが、若くなるに連れて割合が増え、1960年代末生まれでは男性は8%、女性はその7割の6%に上昇し、男女間の差は縮まっている。
ただ、研究は、大幅な留保もつけている。遺伝子全体の影響を考慮すると、性的指向が説明できるのは1%未満にとどまり、「遺伝子から個人の同性愛指向を予測することまではできない」というのだ。
研究が明らかにしたのは遺伝子との関係だけではない。他の性質との比較もしている。調査結果によると、同性愛指向者は、よりマリファナを吸い、より性交経験人数が多い傾向もあることがみてとれる。
また、この研究、多分に副産物ではあるのだが、同性愛者の「切実な悩み」も期せずして明らかにしている。
研究が対象とした2つのデータのうち、イギリスの研究機関からのデータは同性愛経験があると回答したのが男性の4.1%、女性の2.8%だったのだが、米国の機関からのデータでは、同性愛経験者がなんと18.9%も占めたのだ。
しかし、米国人に同性愛者が多い、とするのは早とちりだ。実は米国のデータは同性愛に関する調査への情報提供を同意した個人だけが対象。つまり、同性愛経験者の方が、未経験者よりも自分の性的指向が遺伝子と関係するかについての答えを求めている、ということこそが推察されよう。