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市民権の向上やレッテル張りを減らすことができる

 思えば、三島由紀夫が同性愛者の葛藤を描いた「仮面の告白」で、作者は主人公の性的指向の遠因について、産湯につかった時点にまで遡って分析を試みていた。現実の同性愛者たちも、自分たちの性的指向が何に由来するのか、知りたがっていることが図らずも明らかになったわけだ。

 サイエンス誌は研究を引用しながら、「同性愛指向を遺伝学と関連付けることで、市民権の向上やレッテル張りを減らすことができる」と結論づける。「同性愛指向は病気であり違法であるとされ、70カ国以上で一部は死刑を含む犯罪とされている」とし、「今回の結果を予測、介入、『治療』に使うのは留保なしに不可能だ」とも釘を刺す。

 多分に「政治的な指向」の感じられる結論だが、この研究が実際にどう受け止められるかはまた別の問題だ。遺伝に完全に関連付けることができない以上、環境要因を変えるため、逆に一部の国で行われることもある「矯正」教育などを正当化する根拠にすら使われることも考えられるからだ。

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 研究は今後、遺伝子レベルでの傾向が「環境によってどう変わるか」の調査が必要だと予告する。何が性的指向を決めるのか、真の結論はこの研究をもって出されるかもしれない。