人の気質は遺伝によるのか、環境によるのか。古来のテーマの魅力は、同性愛を含む性的指向を研究する現代の学者にとっても同じようだ。科学誌に発表された最新の研究を紐解いてみると、同性愛をめぐる迷信と真実が白日の下にさらされる。

 同性愛をはじめとする性的指向に関係する遺伝子がある――。同性愛をめぐるタブーに果敢に挑戦して一定の結論を出した論文が8月に科学誌に掲載されると、BBCなどが一斉に取り上げた。

サイエンス誌

 単なる一科学者の推論ではない。マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学をはじめとする研究機関の20人以上の研究者たちによる研究だ。発表先に選んだ媒体は、科学界で有数の権威で、伝統ある「サイエンス誌」。研究の源泉は47万7522人という空前の規模の遺伝子情報だっただけに、その結論は重い。

ADVERTISEMENT

《(同性愛指向に対する)遺伝子の影響を考えるとき、いくつかの疑問が浮かび上がる。まず、どの遺伝子が関係して、生物学的にどんな影響を与えるのか》

 論文は冒頭、そんな疑問を投げかける。