音威子府といえば、駅そばの聖地「常盤軒」がある北海道北部の小さな村の名前である。
シンプルな天ぷらと黒いそばを使った「天ぷらそば」が常盤軒の名物。そのそばが音威子府村にある畠山製麺が作る秘伝の黒い音威子府そばである。
黒いそばといえば、東京近郊でもちらほら見かける。湯島の坂の上にあった「手打古式蕎麦」、その常連さんが始めた麻布十番の渋い店「山あげ蕎麦 庵十」、昆布の粉をつなぎに使った佐原の「小堀屋」などが知られている。
東京で初めて「音威子府」がついた店
音威子府そばを提供する店はいくつかあったが、2019年10月1日、店名に初めて「音威子府」とついた店「音威子府TOKYO」が四ツ谷三丁目の杉大門通りに誕生した。なんともめでたいことである。場所は荒木町。知り合いが経営する「日乃丸酒場うのすけ」の入るビルの1階だ。早速、台風19号が去った週の金曜日の夕方、訪問してみることにした。
杉大門通りに入りしばらく行くと、左手に音威子府と描かれた白い看板が目に入る。早速、挨拶し店に入ると、驚いたことに店長さんはなんと、神田「立ちそば処 つぼみ家」の鈴木章一郎さんだった。よく飲みに出かけていた店だったので、ここで再開できるとは大変めでたいことだ。
17時の入店だったが、すぐにお客さんが次々と来店して、人気の高さがうかがえる。
カウンター7席、座敷8席のこぢんまりした雰囲気のよい、そば屋らしい店である。
鈴木さんがなぜ音威子府そばと出会ったのか。