可愛さよりも「社会貢献をしたいです」が評価される、ミスコンのいま
速水 意識高いといえば、いまどきミスコンに出場している女の子って、みんな意識高い。
おぐら 自己アピールでも社会貢献について言及したりしてますね。
速水 一部からはコンテストをやること自体が批判されていて、それこそ2016年の広告学研究会の事件で一度中止になったはずな
《慶應ミスコン突如中止》セクハラ告発者・濱松さんは「この理由で、このタイミングでの中止は納得がいきません」
https://bunshun.jp/articles/-/14744
おぐら 自分のかわいさとかをアピールするよりも、「ミスコンの活動を通じて社会貢献をしたいです」って言ったほうが、今は評価高そうです。
速水 そして、そういう意識高い子たちはだいたい愛国主義者。日本と地元を愛してる。
おぐら ミスコンからアナウンサーという道もいまだに健在ですが、ラジオとかを聴いていて、ものすごく親近感を与えるような印象の女性アナウンサーが、大学時代はミスキャンパスのグランプリだったりして、けっこうびっくりすることがあります。
速水 ミスコンのイメージが昔とは違うんだよね。ある時期から、むしろアナウンサーってサブカルとかに近いものになりつつあるのかも。
世の中に求められている「庶民派アピール」の上手さ
おぐら いや、ほんとにそうで。ラジオで漫画やアニメやゲームの話を楽しそうにして、リスナーにも優しく語りかけて、インスタにはおどけたポーズの写真をアップして、文化系男子と文化系おじさんが「俺たちの!」って感じで興奮してるんですけど、いやいや、ミスキャンパスだよ、決して「俺たちの」じゃないよ、っていう。
速水 ミスキャンパスって、はっきり言ってヒエラルキーのトップだからね。アナウンススクールにも通ってるだろうし。だから、実際はミスキャンパスからアナウンサーっていう、日本の頂点とも言える道を歩んでるんだけど、それは自分がいかに頂点じゃないかをアピールするのが上手いからこそ、そういう存在になれるんだよね。
おぐら 頂点にいることを自慢げに振舞ったりするような人ではなく、むしろ「俺たちの!」って思わせてくれるからこそ、頂点に立てる。
速水 政治家も似たようなところあるけど、本当は頂点なのにそれをひけらかさず、あくまで庶民派アピールをしなくちゃいけない職業って、アナウンサーぐらいなんだよね。これは日本人が長嶋一茂とか石原良純とかの二世タレントを好きなのと同じで、育ちのいい完璧なエリートが降りて来てくれるのが大好き。
おぐら それはお笑いも同じですね。高尚なユーモアを見せるような芸人はあんまり人気がなくて、上から目線で「くだらねえ(笑)」と言える笑いのほうが人気は出ます。今年のキングオブコントで優勝したどぶろっくも、まさにそういう感じで。「また下ネタかよ(笑)」っていう、芸人を下に見ることのできる安心感があったからこそ、多くの人に支持されたんだと思います。
速水 ちょっと前までは、素人っぽい女性アナウンサーもいたけど、いまはみんな何かしら得意ジャンルがある。アナウンサー試験も一芸入試というか。そういう意味ではジャニーズのタレントと似てるかもね。見た目の良さだけじゃない何かが必要っていう。
おぐら EXILE TRIBEもそうですよ。本が好きとか、ゲームが好きとか、ダンス以外にも何かしらアピールポイントがあります。
速水 慶應の付属から慶應大学に行って、就職の内定も蹴っておきながら、CMでは「正社員になる!」っていう庶民派アピールも大事。
写真=白澤正/文藝春秋