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なぜビームスは全国160店舗すべて違うのか?――ビームス流“飽きられない”店づくり

なぜビームスは全国160店舗すべて違うのか?――ビームス流“飽きられない”店づくり

2019/11/08

最近のキーワードは「食」

南雲 世の中で流行する事柄というのは、他分野を巻き込んで大きくなるものです。

 これまでファッションは、音楽やアート、文学などと結びつきながらムーブメントを起こしてきました。カルチャー全体に興味を抱くことは大事ですね。

 最近なら、食がキーワードだと感じています。皆の関心が集中しているように思えるのです。

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 たとえば、ビオとか自然派と呼ばれるワインが、このところ一部で人気になっていますね。その人気は、「ナチュラルであること」や「持続可能であること」がどんな分野でも求められるようになっていることの、1つの象徴のように見えます。

 私自身もう10年以上、ビオや自然派ワインを飲み続けていて、自宅での食事や外食でも、ほとんどそういうワインを選びます。

 時代の価値観は、さまざまなことに由来して動くものです。それらをできるだけ敏感にキャッチして、その感覚と知識を店舗の内装に活かして、なんとか半歩先を行くビームスらしさを表現してきたつもりです。

 店舗自体は、毎回売り切ってしまう商品とは違い、長い時間、残っていくものですから、確固としたビジョンやオピニオンが必要です。そのときどきの私的な情熱だけでつくるわけにはいかないんですよね。

 

 2000年代に入ると、店の内装について直接指揮をとるようになっていった。最初の大仕事は2004年、創業の地にある原宿店の全面改装だった。

南雲 1976年から続いている店であり、セレクトショップというジャンルでは他が追従できない歴史を持っている場所。そこは大事にしながら改装したいと考えました。

 そこで、道路に面した側は全面ガラス張りでありながら、以前の「館」のような雰囲気も受け継ぐ外観・内観としました。

 創業当時はたった6.5坪だった小さい店が、その頃に抱いていた理想の店舗のかたちを、今ここに実現しました……。そんなストーリーが描けたらいいと思いました。

 その後は、全国に新規展開する店舗や既存店の改装などを、続々と手がけていくこととなる。

ルミネの新店にかつての「渋谷レイ ビームス」を雰囲気を

南雲 1店舗ずつ、コンセプトから考えていきます。その際に重視するのは、場所のアイデンティティですね。なぜこの地にビームスを存在させたいのか、どんな方々に来ていただきたいのか、徹底的に考え抜きます。

 たとえば、商業施設の「ルミネ」に初めて出店するときには、かつて渋谷の女性向け店「レイ ビームス」によく足を運んでくださっていた30代女性を、お客様として想定しながら店舗コンセプトを決めていきました。

 高校生あたりの頃にレイビームスに来ていただいていたのだとしたら、久しぶりに駅ビルでビームスを見かけて、少々の懐かしさを感じていただけたらと思いました。

 ですから、かつての渋谷レイ ビームスの雰囲気を、ルミネの新店にも匂わせるようにしてみました。

 その場所で求められるビームスのあり方は、どういうものか? いつも自問するようにしています。