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「木村さんがタイトルを取って、本当に心から嬉しい」

――木村王位は、深浦さんにとってどういう存在ですか?

深浦 同年代で修行時代も一緒でしたし、第50期の王位戦も戦いました……。あのときは自分が勝ったけど、どっちが勝ってもおかしくありませんでした。実はあの後、1年半くらいは、木村さんとしゃべれなかったんですよ。

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 深浦九段と木村王位といえば、第50期の王位戦を抜きに語ることはできないだろう。2009年に行われたこの王位戦は、当時タイトルを持っていた深浦王位に、木村一基八段(当時)が挑戦したもので、第1局から第3局までを木村八段が3連勝する。木村八段にとって悲願の初タイトルは間違いないと誰もが思ったが、ここから深浦王位が4連勝して防衛を果たしたのである。

 

戦友のような気持ちで王位戦を見ていた

――それまでは、よく会っておられたんですか。

深浦 二人で飲みに行ったりもしていたんですよ。ただあの王位戦の後は、仕事が重ならなかったという事情もありますが、プライベートでも顔を合わせませんでした。そういったことも経験して、本当に戦友のような気持ちで今回の王位戦を見ていました。木村さんがタイトルを取って、本当に心から嬉しいです。

――お祝いの連絡などはされましたか。

深浦 ええ。その日にメールしまして、その日のうちに返信がきました。

――今回は木村さんが、46歳で初タイトル獲得と、最年長記録を大きく更新しましたが、深浦さんも初タイトルは35歳のときでしたね。

深浦 そうですね。当時、4番目に遅い記録だと言われました。

――タイトルに関しては遅咲きですが、ご自身のピークというのは、いつだと感じますか?

深浦 難しいですね。羽生さんは25歳から26歳頃がピークと言われていて、自分もその年代の勝率は7割と高かったですが、結果がタイトル戦に結びついていません。A級に上がったのも30歳前後でしたし、タイトルを争っていた30代のほうが充実感はありますね。

「タイトル戦で戦う姿を弟子に見せたい」

 

――最後にこれからの目標についてもお聞かせください。

深浦 やはりタイトル戦に出ることがひとつの目標です。タイトル戦は、やはり自分がいちばん充実感を得られる舞台なんです。タイトルを取るというよりもタイトル戦に出たい。結果がどうであれ、準備段階から注目を浴びて、その時間を過ごしたいですね。そして、もし自分が年齢によってそこまでたどり着けないのなら、その目標は弟子に託したいと思います。

――ということは、まだ佐々木大地五段にタイトルを取って欲しいというより、ご自身が……?

深浦 ええ自分が(笑)。弟子にも見せたいですよね。タイトル戦という大舞台で戦っている自分の姿を――。

 ちなみに深浦九段は、最近スマホゲーム「ドラクエウォーク」を始めたという。「コツコツレベルを上げるのが苦にならないタイプなんですよ」と笑いながら口にしたこの言葉は、棋士・深浦康市の大きな特徴のひとつなのだと思った。

 写真=深野未季/文藝春秋

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