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「じつはフライトスーツが嫌い」宇宙飛行士・野口聡一さんが着る“アメカジ宇宙服”とは?

「じつはフライトスーツが嫌い」宇宙飛行士・野口聡一さんが着る“アメカジ宇宙服”とは?

2019/12/25
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「宇宙服もファッション感覚で遊べる」

 長身をブルーのフライトスーツに包んだ姿は、想像以上にスタイリッシュだ。私生活でもビームスをよく着るという野口は、今回のプロジェクトを「新時代の到来」と捉えたという。

「宇宙観光のように、民間企業が様々なプロジェクトによって宇宙で活躍する時代がいずれ来るでしょう。今回のビームスさんとのコラボも、そういう時代のきっかけになればいいと思っています」

 野口は05年にスペースシャトル・ディスカバリー号の乗務員として宇宙飛行に初参加。 09年には日本人として初めてソユーズ宇宙船の船長補佐に任命されるなど、日本を代表する宇宙飛行士の1人である。

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 現在、野口は次のフライトへ向けて準備中だ。まだ宇宙へ向かう時期は未確定ではあるが、米国が開発を進めている新型の有人宇宙船に搭乗して、国際宇宙ステーションへ向かうことが予定されている。

POLO SHIRT

「ビームスさんには素材選びからデザインに至るまで開発の全工程に携わり、宇宙飛行士の意見を取入れて宇宙服を製作して頂けると。それを聞いて、すごく新しい取組みだなと思いました。

 今回のフライトでは宇宙服もファッション感覚で遊べるものであり、そして『宇宙にも日常を持っていける時代だ』と、多くの人に身近に感じてもらえると嬉しいですね」(同前)

「原宿のショップ店員」から「宇宙服のデザイナー」に

 プロジェクト始動を受けて、選ばれたビームスの開発チームは5人。プロデューサーとしてJAXAとの折衝に当たったのがビームス社長室の児玉正晃だ。落ち着いた雰囲気とは裏腹に、タフネゴシエーターの一面を持つ児玉は、プロジェクト案を聞いた時の心境を、「宇宙は私たちにとって未知の世界であり、何より民間企業がプロデュースした洋服を、宇宙飛行士が身に纏って宇宙で暮らすというのは初めてのことです。純粋に『面白そう』と思いました」と述懐する。そして、

「今回、プロデューサーとして僕が気を配ったのは、トップダウンの仕事にはしないこと。現場の人間にヤル気になってもらいたかったし、彼らにメリットがあるプロジェクトにしなければいけないと思っていました。加えてこのプロジェクトの話を聞いたときに真っ先に浮かんだのは、任せることが出来るのは後輩の“アイツ”しかいないな、ということでした」

SPORTS T-SHIRT & SHORTS & SOCKS

 児玉がデザイナーとして指名をしたのが、ビームス店舗でのバイト時代から18年来の付き合いのあった中田慎介だ。少年のような雰囲気を纏う中田は、原宿のショップ店員上がりのファッションマニアで、「ビームス プラス」などのメンズカジュアルレーベルを成功に導いた敏腕ディレクターだ。中田は当初、「戸惑いを覚えた」と振り返る。

「僕は初め宇宙服と聞いて、ハイテクな感じをイメージしていました。しかし、求められているものはそうではなかったのです」

 実際にビームスが製作した宇宙服のラインナップを見ると、トラディショナルスタイルのアイテムが並んでいることに驚く。例えば、ラガーシャツやボタンダウンシャツにチノパン、フリースパーカー、クライミングパンツ。そして運動着として、カラーTシャツにショートパンツといった具合だ。