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「アメカジ路線で行こう」

 当初、社内からは「オーソドックス過ぎる。ハイテク感を出したほうが格好いい」という声も挙がったという。中田が振り返る。

RUGGER SHIRT & BUTTON DOWN SHIRT

「宇宙というイメージから、僕らは前衛的なもの、シャープなものをつい思い浮かべてしまうんですね。色合いもグレーとかモノトーンとか。でも宇宙がモノクロの世界なので、宇宙飛行士の方は逆に『もっとカラフルなアイテムを取り入れて、活動を明るくしたい』と考えていた。そこでバリエーションとコーディネートを重視し、ビームスが得意とするアメカジ路線で行こうと思ったんです。実際に野口さんもアメカジをよく着られることも判った。特にボタンダウンシャツなどは、『ビームスといえば~』と言われるくらいのマストアイテムなのでウチらしさも演出できる」

 野口の提案を取り入れ、素材にもこだわった。宇宙ステーション内では持ち込める服の点数が限られているので、1着の服を数週間洗わず着ることもある。そうした中で作業を続けることを考え、吸水性、速乾性のある化学繊維を採用した。

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CHINO PANTS & CLIMBING PANTS

「一見すると普通のチノパンも、コットン素材ではなく、ポリエステルとポリウレタンを使用し、肌触りがよくストレッチ性の高い生地で作りました。また、日本ならではの天然素材ということで、ラガーシャツには竹を原料とした糸を使用しています。竹には消臭効果があるんです」(同前)

 さらにデザイン面でも驚きの工夫が施されている。前出の児玉は「ビームスのイズムを存分に盛り込めた」と説明する。

「デバイスや工具など宇宙ステーション内で作業するときのために、例えば、パンツには大小様々なポケットを多くつけて、利便性や収納性も高めています。中にはビール瓶が入るくらいの大きなポケットもある。マジックテープで着脱できる大型ポケットを付け二重構造にするアイデアはビームスのオリジナルで、ショップでも人気の高いディテールの1つ。それを宇宙服にも大胆に取入れました」

 今回、特に野口がこだわったのが、ブルーのフライトスーツだという。

 その最大の特徴とは、

「上着とパンツをジッパーで切り離すことが出来るセパレート構造になっている点です」(中田)