設楽率いるビームスは、19年2月期の売上高は830億円、前期比約4%増と堅調な経営を続けている。アパレル業界全体の停滞が叫ばれるなか、創業以来、赤字に陥ったことがないという“エクセレントカンパニー”でもある。しかし、設楽は「現状に甘んじることなく絶えず新しいチャレンジをしたい」と語る。
「ビームスは1976年の創業から『海外のいいものを日本に紹介する』という発想のもとビジネスをしてきました。2016年に40周年を迎えたことを機に、今度は『日本のいいものを海外に』という路線を打ち出した。それは私が様々な経験を経て、日本人のきめ細やかな物作りのセンスは、世界に通用するという確信を持ったからです。その取組みを始めて、すぐにJAXAさんから今回のプロジェクトの話を頂いた。これは日本の文化を海外に伝える大きなチャンスじゃないかと、縁を感じましたね」
民間参入相次ぐ宇宙開発“新時代”
近年、宇宙開発事業は新時代を迎えつつある。これまでは国家事業として取組まれていたものが、民間参入が相次ぐ時代となったのだ。国立研究開発法人であるJAXAでも、 宇宙航空分野の研究開発の枠を超え、民間企業との連携に力を入れ始めた。設楽曰く、その動きはビームスにとって偶然の巡り合わせだったわけだ。
ビームスが開発した宇宙服を纏うのは宇宙飛行士の野口聡一(54)だ。
今年6月。東京御茶ノ水にあるJAXA東京事務所の一室で野口に取材した際、「宇宙の魅力は?」と問うと、輝くような眼差しでこう答えた。
「宇宙から見る地球は、強烈です。美しい絵というより、地球そのものが生きていることを実感できる。その景色だけでメシが食えるくらい(笑)」