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「じつはフライトスーツが嫌い」宇宙飛行士・野口聡一さんが着る“アメカジ宇宙服”とは?

「じつはフライトスーツが嫌い」宇宙飛行士・野口聡一さんが着る“アメカジ宇宙服”とは?

2019/12/25

「フライトスーツを着て下さい」が嫌な理由

 もともとフライトスーツは米国製の一般的なデザインのものが支給される予定だった。だが野口には不満があった。ある日のプロジェクトミーティングで次の会話が交わされたという。

野口「フライトスーツってダボッとして格好悪いから嫌いなんですよ。特に講演などで呼ばれるとき、よく『フライトスーツを着て下さい』って言われる。でも分厚い素材だからとても暑いんです……」

児玉「『ツナギ』はうちの人気アイテムなんですよ」

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野口「もし、フライトスーツも作れるようであれば、お願いしたいですね」

 野口がふっと漏らした言葉から開発がスタートし、結実した、今回のセパレート構造のフライトスーツ。考案したのは中田だ。

FLIGHT SUIT

「色々なアクション機能を想定して、一から構築するつもりでデザインを考え直しました。そこでスーツの腰回りの部分にジップを付けて上下を取り外しできるようにしたんです。そのジップも外からは見えないようなデザインにしました。より現代的にアップデートされたフライトスーツを目指しました」

 このアイデアは宇宙飛行士が用を足すときにフライトスーツを上から下まで丸ごと脱がないといけないという、隠れた悩みも解決するものだった。軽量かつ高機能、宇宙のみならず地球上で着ても快適に活動できる。ファッションブランドならではのアイデア満載だ。

「このフライトスーツ、もしかしたら世界基準になりますよ!」

 試着時に、興奮した野口は思わずこう感嘆の声を漏らした。野口の好反応を見て、児玉は「さすが服作りに関しては、中田は百戦錬磨だ」と、後輩の手腕に舌を巻いたという。当の中田は「ワクワクしっ放しだった」と笑みを見せる。

「僕らはビームスで働きながら、機能に基づいたディテールワークが美しさに繋がるという考えをずっと学んで来ました。実は今回のプロジェクト前には、それが『宇宙服を製作するときにも活かせるのだろうか』と不安を感じていた。でも実際に取組んでみると、これまで経験し、会得してきたデザインディテールが宇宙服にも十分に活かせたんです。さらに、フライトスーツでは新しい発見も提案させてもらった。『僕たちでも世界に何か貢献できる』という感覚を持てたのは楽しかったです」

 野口の宇宙飛行士としての視点、それをビームスならではの解釈で表現するという協業により“ビームス版宇宙服”は完成したのだ。