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――リドリー・スコットといえば、SF映画の金字塔『ブレードランナー』(1982年公開)がいまだに多くの熱狂的なファンに支持されています。遺伝子工学技術によって生まれた人造人間レプリカントが人類に反旗を翻すというストーリーですが、奇しくも、舞台は『アースクエイクバード』公開と同じ2019年11月なんですね!

小林 リドリーは現在81歳ですが、とても頭の回転が速くて、エネルギッシュ。『ブラック・レイン』の監督ですから、松田優作さんの芝居に対する情熱や、一本気な刑事を演じた高倉健さんの話を聞かせてもらいました。

――『HiGH&LOW THE MOVIE2/THE END OF THE SKY』(2017年夏公開)の源治は主人公たちを追い詰めるヤクザの若頭役でしたが、バイクで疾走し、日本刀でコンクリートに火花を散らしながら追ってくるシーンは『ブラック・レイン』で松田優作さんがアンディ・ガルシアの首を刎ねる場面を彷彿とさせると、当時話題になっていました。その『ブラック・レイン』を監督したリドリー・スコット製作・総指揮の作品に、今回こうして出演されるというのも感慨深いですね。

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小林 先人の方々が積み上げてきてくれたものの恩恵を今自分は受けているんだなとしみじみ感じています。彼が今考えている映画の構想について、日本の現状についても、たくさん話をしました。リドリーに「君には映画に必要な存在感があるから、続けたほうがいい」と言ってもらえたことは、とても光栄でしたし、ああ、ここがスタートなんだな、と思いました。覚悟が決まりましたね。

『アースクエイクバード』の一場面。左よりルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)、禎司(小林直己)、リリー(ライリー・キーオ)

「アースクエイクバード」は警報。最後の瀬戸際に聴こえる音

――撮影は西新宿と佐渡島などで行われましたが、東京が私たちの知っている東京とはどこか違う異国のようでもあり、非常に蠱惑的に切り取られながらも、決してステレオタイプ的な日本像に陥らず、深い日本への理解が底にあると感じました。

小林 色も違いますよね。決して記号化されただけの日本ではなく、色や切り取り方が異邦人からの目線だったと思います。しかし、日本の日常を丁寧に切り取っている。監督のウオッシュも1980年代に日本に留学していたので、日本を尊重する気持ちを持っていてくれていました。撮影が始まる前にもLAで一緒に食事をして、日本の文化や慣習、精神性などについて、自分のアイデアや意見を伝えました。

――タイトルの「アースクエイクバード(地震鳥)」は、地震の後に鳴くといわれる鳥を意味します。「アースクエイクバード」とは、いったい何なんでしょう。

小林 「アースクエイクバード」が何のメタファーかというと、警鐘、警報、アラームのようなものだと思っています。最後の最後、踏みとどまらなければいけないところで聴こえる何かのサインなのかもしれません。それが聴こえなくなったら、どうなってしまうのか……。

 自分にとっての「アースクエイクバード」、心の小さな声は何なんだろう。自分にとって本当に大切なものは何なのか?というメッセージも、この映画は内包していると思います。