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「ぜひマーベル映画に!」と米誌に絶賛された EXILE/三代目JSB・小林直己は哲学専攻の「文科系」

「ぜひマーベル映画に!」と米誌に絶賛された EXILE/三代目JSB・小林直己は哲学専攻の「文科系」

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個人の仕事がなかったとき、一日3時間から6時間英会話を習っていた

 今回、話題になったのが、小林さんの英語力だ。ロンドンでのワールドプレミアでは、20社以上もの海外メディアの取材をすべて通訳なしでこなした。

――一時期は、週5日、3時間も英会話のレッスンに通われていたそうですね。

小林 うーん、6時間の日もあったかもしれません。

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――6時間!

小林 それくらいヒマだったんですよ(笑)。グループとしては人気があったかもしれませんが、個人としての仕事がない時期があったんです。自分という存在が求められていないように思えて、そのときに自分は何でグループに貢献できるか、どうしたらEXILEであり続けられるのか、三代目だって自分がいなくても回るんじゃないか――じゃあ自分の存在意義って何だろうって考えたんです。

 誰しも、組織やチーム、会社の中で自分の存在意義について悩むことがあると思うんです。このままでいいのか、変わるべきなのか。そして、僕は「芝居」と「英語」に特化しようと決めた。そして、やるんだったら、世界を目指そうと思ったんです。

 日本だと芸能事務所が一括してマネジメントもPRもエージェント機能も果たしてくれますが、アメリカではエージェントも弁護士も税理士も自分で雇うのが普通です。まず、マネジメントチームを探すところからのスタートでした。もともとLDHのスタイルとして「自分のやりたい仕事は自分でつくる」というところがあるのですが、自分には直接交渉できるスタイルは合っていたと思います。3カ月のプロセスを経て『アースクエイクバード』のオーディションに合格したときは、膝が震えるという感覚を味わいました。

前代未聞! 「文庫1万字解説」が生まれたわけは……

 187センチの長身で、モデルとしても活躍。パリコレでもランウェイを歩き、現在はリーダーを務める三代目J SOUL BROTHERSの全国ライブツアーの真っ最中である。所属するLDHといえばストイックな体育会系のイメージだが、小林さんは、大学で哲学を専攻したバリバリの「文科系」でもある。読書家としても知られ、書評も執筆しているが、12月5日発売の『主君』(高殿円著・文春文庫)では、前代未聞の1万字にものぼる解説を執筆している。

『主君』(高殿円著・文春文庫)

――『主君』は、『トッカン』『上流階級』などで知られる人気作家の高殿円さんが井伊の赤鬼と呼ばれた井伊直政の生涯を、家臣の木俣守勝の目から描いた作品です。解説を拝読しましたが、あまりの熱量に胸を打たれました。歴史書を丹念に辿るところから始まり、新渡戸稲造の『武士道』を紐解いて忠節の道とは何かを論じ、そして、EXILE HIROさんやEXILE AKIRAさんとの出会いから「天命」について語っていく……。この間、ロンドンとの往復や度重なる記者会見、ライブツアーなどで執筆の時間などほとんどなかったと思うのですが、なんと前代未聞の1万字の解説という大作です。

小林 実は、字数を勘違いしてたんです(笑)。削りに削って通常の枚数のものを編集部に提出したのですが、その際に何か少しでも使えるところがあったらと思って、元の1万字バージョンも同時に送りました。

――そのオリジナルの1万字バージョンを読んだ編集部が感動して、異例の1万字解説収録となったそうですが、相手の人生を背負うということや、人の運命について、魂をぶつけるようにして書かれています。非言語表現の極致であるダンスと、言語表現の極致である文筆業、その正反対の両道を究めるというのは実にタフなことですよね。

小林 ちょうどロンドンで海外メディアの取材を受けているときだったので、英語脳になってしまっていた分、切り替えに苦労しました。でも、自分でも登場人物を演じてみたいと思った作品でしたので、身を削ってでも書きたいと思いました。イメージされるような小説の解説文とは異なる部分もあるかもしれませんが、井伊直政と木俣守勝に対し、特に共感を覚え、自分の人生を引用したくなりました。比較対象としてEXILEのストーリーを引用したのですが、それを許してくれた編集部と高殿円さんには、大変感謝しています。