デモ隊の「隠れ家」 キリスト教会の住所も晒された
暴露の被害者はデモへの直接的な参加者だけではなく、デモ学生に親和的な教師や、『蘋果日報』などデモ寄りの報道をおこなうマスコミの記者なども含まれている。さらにはデモ隊が休憩ポイントとして利用する店舗や教会施設(今回の香港デモは各派のキリスト教会がかなりバックアップしている)の名前と住所、さらに物資やデモ参加者を輸送する車両数百台のナンバーや所有者も暴露の対象だ。
AFPの記事は、中国内地の共産主義青年団や国営放送の中国中央テレビ(CCTV)、党中央機関紙『人民日報』傘下の『環球時報』などが微博(中国のSNS)でこのサイトを勧めていることから、中国当局の関与が疑われると指摘している。サイトのクオリティや情報量から考えても、おそらくそれに近い背景はあるだろう。
ほか、デモ隊側もよく利用しているロシア系のメッセージソフトTelegramにも、デモ参加者の個人情報を暴露するチャンネルが存在する。こちらも情報はかなり詳細で、『香港解密』と同じくなんらかの大規模な組織が介入している可能性がある。これらのサイトやTelegramチャンネルが登場したのは、香港警察のデモ鎮圧作戦が強化された(=中国政府・香港政府が強圧的な姿勢を強めた)8月半ば以降とされる。
さらに別途に『掃地僧』というサイトでも、デモ参加者の生年月日や住所・SNSアカウントなどの個人情報が350人近く暴露されているほか、中国政府・香港政府寄りのデモ批判記事が大量にアップされている。
デモ隊側も警官の家族写真をリーク
もっとも、実は敵対者の個人情報を暴露する作戦はデモ隊のほうが先におこなっている。今回の香港デモは6月9日の100万人規模の平和的デモを契機に大規模化したが、はやくも6月末ごろにはL(仮名)という警察関係者の個人情報をリークするTelegramチャンネルが作られ、10月末までに数十万人単位の登録者を集めていたのだ。
Lでは個々の警官のポリスナンバーやIDナンバー・生年月日・学歴・家族構成・電話番号やSNSアカウントなどが暴露され、なかにはガールフレンドや配偶者の個人情報まで晒されている例や、子どもが写った家族写真が修正なしでアップロードされている例もあった。
こうした警官の個人情報の暴露行為は、香港でも人気のスマホゲーム「ポケモンGO」をもじって「POPOMON GO」と呼ばれていたらしい(「POPO」は警官の隠語である)。
ただし、前出の反デモ側の暴露サイト『香港解密』がどうやら組織的な調査能力を持つとみられるのに対して、私が聞いた話ではデモ側のLの情報は、個々の警官の知人による暴露や、フェイスブックなどのSNSの書き込みを発掘することで収集されていた模様である(この記事の哨兵部隊のように、「POPOMON GO」を専門的におこなう有志グループが存在する可能性はある)。