『支納維基』の運営スタッフに近い中国人の情報提供者によると、これらの個人情報は中国の治安機関内部の協力者からのリークがあるほか、ハッキングで入手していたとされている。また『支納維基』や『悪俗維基』の運営には、日本となんらかの縁がある中国人か在日華僑が多少は関係していたようだ。
党高官の個人情報を晒して戦う方法は、アメリカに亡命中の中国の反体制派大富豪・郭文貴が2017年から始めた、ユーチューブでの高官情報の暴露からも影響を受けているらしい(郭文貴については拙著『もっとさいはての中国』を参照されたい)。
リークサイトにログインしただけで拘束
ただし、これらのサイトやチャンネルは、今年になり続々と閉鎖された。特に『支納維基』と「楚晨展覧館」は、香港デモが激化した10月後半に壊滅し、『支納維基』に中国国内からログインしていた中国人ネットユーザーが公安局に呼び出されたという。
関係者の推測では、中国の公安のネット部隊にいるホワイトハッカーによって、サイト利用者の情報がほとんど抜かれてしまったのだろうということだ。
事実、10月28日には福建省厦門市の公安当局が、14歳~25歳の若者ネットユーザー7人を「反中国的な『精日(=親日派)』分子が境外(=中国国外)に作った『悪ふざけ』ウェブサイトにログイン・閲覧し、国家と民族のイメージを損なう言論を発信した」かどで拘束。こちらは厦門市公安当局によって発表されている。
中国当局はどうやら今年の夏から秋にかけて、香港のデモ隊や中国国内の反体制派ネットユーザーがおこなってきたオンラインでのリーク行為を、徹底して叩き潰す方針を取りはじめたようである。
「陰険なリーク攻撃」がこれから主流に?
強大な組織と戦う場合に、組織の個々の構成員の個人情報を暴露して相手を痛めつける手法は、かなり陰険なやりかたではあるが効果は高いと思われる。人民を監視する側の当局の人間は、自分の情報を人民に見られるのはイヤなのだ。
特に現代社会では個人の情報が身分証番号に紐付けされてデータベース化されていることから、技術的手段でハッキングしたり対象の情報にアクセスできる人物の協力がありさえすれば、攻撃ターゲットについてかなりの情報をぶっこ抜いて晒す行為が可能である(監視下社会化している中国内地ではなおさらだ)。
もちろん、市民のデータベースを最初から全面的に握っている当局側が反撃に出た場合、抗議者の側はかなり痛い目を見ることになる。ただ、リスクの面では街でデモをおこなって火炎瓶を投げるよりも多少はマシかもしれない。
香港や中国に限らず、今後も反体制運動においては、この手の戦い方が多く採用されていく可能性は高い。サイバー化する現代の世界ならではの話だと言えるだろう。