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 帰りは船で戻ろうか。バスで唐戸に出ると門司港行きの関門連絡船に乗れる。昔の鉄道連絡船の名残のよう。しかし、もちろん現在は鉄道との接続はなく約20分間隔の運航で、所要時間は約5分だ。関門海峡と巌流島を眺められるから遊覧船のようでもある。しかし、いまもこの船を生活路線として使い、日常的に利用する人がいる。

所要時間5分の関門連絡船 ©杉山淳一

 関門海峡回遊ルートを楽しむおトクなきっぷ「関門海峡クローバーきっぷ」がある。大人800円。小人400円。「潮風号」「サンデンバス」「関門汽船」を1回ずつ利用できる。

低コストで運行を実現できた理由とは

「潮風号」は門司港だけではなく、関門海峡観光の一翼を担っている。路線の正式名称は「平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線」だ。北九州市が線路設備を保有し、平成筑豊鉄道が営業する。平成筑豊鉄道は筑豊地域でローカル線を運行する第三セクターで、福岡県も出資している。その線路は前出の通り、休止した貨物線の再利用だ。だから建設費は簡素な駅の設置費用のみ。

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 車両も中古品を使ってコスト削減した。機関車は南阿蘇鉄道がトロッコ列車用の新しいディーゼル機関車を導入する際に、いままで使っていた機関車を譲受した。客車は島原鉄道で運行を終了したトロッコ列車を譲り受けた。

北九州銀行レトロラインの位置を赤線で記した(地理院地図を筆者加工)

 北九州市が貨物線の観光利用を検討しているとき、幸運なことに島原鉄道と南阿蘇鉄道の廃車情報が出た。その情報を知った理由は、私が細々と続けていたブログだったそうだ。当時、北九州市の担当者だったSさんから、お礼のメールをいただいた。今回の取材旅でご挨拶させていただく機会があった。私もこの路線に貢献した1人なのかな、僭越ながら思った次第である。

 さて、平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線には「北九州銀行レトロライン」という愛称がある。これは命名権を北九州銀行が獲得したから。銀行が鉄道を運営していると勘違いされそうだけど、この命名権収入も「潮風号」の財源だ。短距離とはいえ鉄道の運営はコストがかかる。そこで増収を見込んで路線名の命名権を販売した。