もともと韓国内には日米韓の連携強化に消極的な左派勢力が存在し、文大統領の政権下でその勢力が力を増していった。経済政策で失敗した文氏は政権を維持するため、左派勢力の求めに応えようとした。
文氏はアメリカが日本と韓国の間に入り、GSOMIAの破棄を回避するために日本に圧力をかけると判断した。そうなれば、日本政府に対し、輸出管理の厳格化の撤回を迫ることができると、文氏は踏んだ。
だが、アメリカは破棄の決定を覆すよう韓国側に強く求めた。文氏は自らの政権の求心力の低下を避けるため、アメリカの求めに応じなかった。その結果、アメリカは文政権への不信感を強めた。いま文政権はかなり追い込まれている。
失効をよろこぶのは、北朝鮮や中国だ
「日本と韓国の両政府とも、国民の安全の確保に役立つと考えている。その大切な防衛協力をなぜ、捨て去るのか。韓国の文在寅政権は、破棄の決定を撤回すべきである」
こう書き出すのは11月16日付の朝日新聞の社説である。見出しも「日韓情報協定 文政権は破棄の撤回を」と朝日社説にしてはストレートだ。
韓国に対し、好意的な朝日社説でさえ、今回の韓国の態度に強い違和感を覚え、決定の撤回を迫っている。朝日社説は書く。
「ソウルできのう開かれた米韓安保協議では、エスパー米国防長官が翻意を促した。記者会見で、協定の破棄や日韓関係の悪化で『利益を得るのは中国や北朝鮮だけだ』と述べた」
「米国にとって、この協定は世界に広がる米軍展開のネットワークの一部を担う取り決めだ。中国との覇権争いという大きな戦略のなかでも悪影響になることを懸念しているようだ」
「だが、韓国大統領府の幹部は日本の態度に変化がなければ、変更は困難との認識を示した。徴用工問題への日本側の事実上の報復措置である、輸出規制強化の撤回を求めている」
朝日社説が指摘するように、GSOMIAの失効を喜ぶのは、北朝鮮や中国である。そのことを韓国の文政権はどこまで理解しているのだろうか。