中央線の立川から分岐する青梅線といえば、
北口を出たら、旧青梅街道を道なりに左へ。成木街道入口交差点を右折して数分進むと、鉄道公園入口という交差点にぶつかる。あとから聞くと、この日は休みだった鉄道公園は、このあたりでは有名なスポットらしい。要は、他になにもないということだ。
ここを左折して、永山公園通りという道を進む。左側に用水路が現れ、澄んだ水が静かに流れている。いい雰囲気だ。……と気を取られていたら、お目当ての店が右側に現れた。
黄色い看板に真っ赤なのぼり!
「はるよし&友子」
これが店名である。
空の青さとマッチする黄色い看板、そして「ラーメン」と書かれた真っ赤なのぼり。もうそれだけで、B中華ごころを充分に刺激してくれる。
着いたのは13時半くらい。カウンターの奥にかかった暖簾の向こうでは、はるよしさんらしき男性と、友子さんらしき女性がなにかをしている。つまり、私が入っていっても気づかない。
「こんにちは」と声をかけると、暖簾を手でよけながらはるよしさん登場。どことなくロックっぽい顔つきで、若いころにパンク・バンドをやっていたと聞いたとしても、そのまま信じてしまいそうだ。
「前から来てみたかったんですよ」と声をかけると、「来てみたかったの? じゃあ、来りゃよかったじゃない」と、当たり前すぎる返事が返ってきた。
「ビールはない」「ラーメンじゃつまんない」
「でも、遠いんですよ。荻窪なんで」
「荻窪! じゃあ、損のないように食べなきゃなあ。せっかく来たんだから。なにがいいかな」
「ビールってあります?」
「ビールはない」
「ないですか。じゃあ、ラーメンがいいかなあ」
「ラーメンじゃつまんないよ。焼肉もうまいんだよね。タンメンもめちゃめちゃうまいんだよ」
いきなりのラーメン全否定(なのにタンメンならOK)。しかもビールなし。その時点で、B中華の定義からは外れる。そう、実をいうとここは中華料理店ではなく、基本的には「お食事処」なのだ。
「じゃあ、タンメンで」
「タンメンで行く? ちょっと待ってね。うちのは難しいんですよ、特に。微妙だから。すごい微妙なことやってるんだよ。どう微妙って、どう言ったらいいんだろ。すごい微妙なことやってるね。食べりゃわかるよ」
どうやら“微妙”は決めゼリフのようである。ともあれ、それはもう食べてみるしかないだろう。