春日 また、みんないい顔してるんですよ。特に髭の操縦士が好きです。
上坂 アジア寄りのロシア人の顔してる。トルクメニスタン系というか。
春日 スラブじゃなくて中央アジアなんですよね。「いいおやじ」って感じの。
上坂 昔は馬に乗ってたよ――みたいな。
春日 黒澤明の『デルス・ウザーラ』の世界から来た感がありました。
上坂 すごくリアルな軍人顔。
113分の中に娯楽要素が凝縮!
春日 しかも、娯楽映画だからちゃんとラブストーリーの要素もありという。
上坂 そうなんです。無理やりね。
春日 無理やり感ありましたね。
上坂 収容所にあんな美女がいるかな――っていう。
春日 しかも都合のいいことに通訳の役で。
上坂 そう。絶妙な立ち位置。
春日 そんなすぐ好きになるかい――というスピード感も含めて、113分という中にいろんな娯楽要素が入ってました。
上坂 ギュッとしてて。60年代の戦争映画を最新の技術で再現したみたいな感じがして。最高でした。
春日 昔の映画の何がいいかって、短いのがいいわけです。凝縮されているから無駄なシーンがない。
上坂 そう。無駄なシーンがないですね。
春日 この『T‐34』もその良さがあると思います。
上坂 しかも、中身は盛りだくさん。てっきり最初の1941年をずっとやるのかと思ったら、そこから一気に時間は経過して。そのおかげでT-34の初期型と後期型の両方を出してくれるのでありがたかったです。
春日 戦車好きにはたまらないですね。
上坂 そうなんです。性能がすごくアップしてるのも分かるし。ソ連だけでなくドイツ戦車の恐ろしさも分かる。
黒澤明の影響を感じる“地形バトル”
春日 そしてなんといってもドイツ戦車との闘いがいい。お互いの戦い性能を踏まえた上で、作戦を立てていく。作戦を立てる様子を丁寧に見せるところがリアルで。
上坂 地形バトルというか。偵察に行かせて、坂の上の様子がどうなっているかを調べたり。そういうのをちゃんと教えてくれてるのがたまらないです。
春日 あれは黒澤明の影響なのかなとか思って。黒澤は『七人の侍』で、野武士から村を守るために周囲を要塞化させる設定にしているのですが、その時に作戦会議をやらせて地図を描いて地形を見せて、「どこでどう防いでいくか」をあらかじめ観客に見せているんです。それをやらないとサスペンスが伝わらないだろうと。
上坂 なるほど。