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ジェイミーと選手たちとの間にあった“溝”

 2016年11月のヨーロッパ遠征。ジェイミーは徹底的なキック戦術を選手たちに命じた。福岡堅樹はいう。

「相手がキックからのカウンターアタックが得意なフィジーでも、キックを蹴るという話だったので、『大丈夫かな……』と半信半疑でした。案の定、カウンターから崩されて負けましたし……」

 チーム内でのマネージメントも、選手の負担が増えていた。とある中心選手からは、遠征先でこんな話を聞いた。

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「試合のメンバーに入れなかった選手のケアを、ジェイミーがリーダー陣に振ってきたんです。マジかと思いました。エディーは、そのあたりの人事関係は抜け目なく、スタッフが完璧にやっていたので。あとになってみれば、ジェイミーの意図も分かるようになったんですが……」

 チームの発足当初、ヘッドコーチと選手との間にはチーム運営、戦術の方向性について溝があったのだ。

ジェイミー・ヘッドコーチ ©文藝春秋

 2017年も状況は大きくは変わらなかった。福岡と同じくW杯で大活躍を見せた松島幸太朗は、今年になってこう告白した。

「この戦術のままで大丈夫なんだろうか? というのは個人的には感じてましたし、少なからず、誰もが不安を抱いていたんじゃないですかね」

 潮目が変わったのは2018年の9月だった。首脳陣、選手たちにも「あと1年しかない」という焦燥感が芽生えていた。

何がチームを変えたのか

 この時期に和歌山合宿が行われ、ジェイミーは「日本人と海外出身の選手たちの違い」を選手たちに向けてプレゼンテーションし、相互理解を促した。ジェイミーは言う。

「海外出身の選手たちは、日本の選手たちがミーティングで発言せず、消極的なことが理解できない。『そんな姿勢でチームに参加して意味があるのか?』となる。反対に、日本の選手たちは外国人選手が時間にルースだったりすると、それにイラッとしたりする。そのほかにも様々なカルチャーギャップがあることを認め、話し合ってその溝を埋め、しっかりとしたチームの土台を作ろうと選手たちに話しました」

 そこからチームは変身した。