W杯でアイルランドに勝てると確信できたある試合
選手たちの戦術の理解度が増し、ミーティングの内容も濃いものになっていった。
2018年11月17日に行われたイングランドとのテストマッチで、リーチは確信を深めたという。
「最終的には15対35で負けたけど、前半は15対10でリードしてた。内容的に圧倒してました。前半は、テリトリーが77パーセント、ポゼッションも69パーセントと日本が試合を支配してたんです。イングランドのホームでこれだけの試合が出来たのだから、W杯でアイルランドには絶対に勝てると思いました」
異例の長期合宿で一致団結
この秋の遠征で全員が自信を深め、ONE TEAMの土台が築かれた。そして2019年2月からはW杯に向けて長期合宿に入った。
世界的に見て、これは異例の長さだ。海外では、プロリーグの期間が初夏まで続き、しかもクラブチームの発言権が強い。エディー・ジョーンズが率いたイングランドを例にとると、2019年6月1日までプロリーグの試合が行われ、必然的に代表合宿は夏からとなる。チームとして一体感、技術を高める時間は日本とは大違いだ。
また、フィジーやサモア、トンガといった国々の選手は、経済の“南北格差”もあり、サラリーの低い母国の代表よりも、欧州のクラブのお金の方を取る選手も中にはいる。
日本の場合は、自国開催ということもあり、各企業チームが選手の合宿参加に協力した。長期間、選手の拘束が可能となれば、首脳陣は計画的な合宿を組むことができる。まさに国内が一体化したことが、ONE TEAMを可能にした。
そして“最高傑作”スコットランド戦が生まれる
チームが熟成し、最高傑作が生まれたのは10月13日、準々決勝進出をかけ、横浜で行われたスコットランド戦だった。前日、台風19号が日本列島を襲い、犠牲者も出ていた。この災害がチームの結束をさらに強める。リーチが振り返る。
「試合の前にホテルでチームミーティングがあって、ジェイミーからとても印象的な話がありました。『今夜の試合は、私たちだけの試合ではない。苦しんでいる人たちのものでもある』。選手たちはみんな、すごく感じるものがあったと思います」