監督からは「とにかくしのいで、いい流れで繋ごう」
実際に今回、東海大の2区を走った塩澤稀夕(3年)は、レース後にこんな風に語っていた。
「自分の役割としては、『エース』というよりはチーム全体のことを考えて、『しのぐ』ということを一番の目的としていました。両角(速)先生からも『とにかくしのいで、いい流れで繋ごう』ということを言われていたので。いい位置で1区の鬼塚(翔太、4年)さんが渡してくれたので、タイムとかはあまり気にせず、とにかく先頭集団について、そのまま先頭で襷をわたすことだけを考えて走りました」
また、青学大もこの2区に同校史上初めて1年生の岸本大紀を起用。区間順位は5位ながら、こちらも塩澤同様先頭集団でレースをすすめ、最後にスパートをかけるという展開に持ち込んでいる。
そうして2区を「しのいだ」結果、もっとも力の差がでるのが山上りに繋ぐ4区であり、そこにエース格の選手を置けるかどうか、またその選手がしっかりとエース級の走りができるかどうかが、今大会の結果を左右したのではないか。
4区のランナーには高い対応力が求められる
実は昨季往路優勝を果たした東洋大は、前述のように前回大会ではエースの相澤を4区に起用している。逆に敗れた青学大は4区でのブレーキが響いて大きな後れを取った。そのことから、4区の重要性が再認識されてはいたが、今大会でそれが決定的なものになった。
東海大もこの区間にエース格の名取を配置しており、決して悪い走りではなかったものの、あと一歩の爆発力に欠けた。4区まで展開が進むと、先頭から少し離れた単独走もあれば、先頭集団での集団走になる可能性もあり、そこを走るランナーには高い対応力が求められる。また、コース自体も終盤含めコース上に小刻みなアップダウンが何度もある難コースだ。そのため、実力や調子がより顕著に現れるということなのだろう。そこに大砲を置くことができた原監督の戦術眼は、まさに見事だった。
往路を終えた原監督は、「総合優勝しなければ『終わりよければすべてよし』とならない」と語り、まだ気を緩めてはいない。とはいえ、勝負師の戦術眼は一層磨かれているようだ。
今後、シューズの進化やランナーのレベルアップにより、箱根駅伝もさらなる高速化が想定される。そうなれば優勝を狙うチームでは、さらに2区を「しのぐ」形で流し、総合的に勝負するというケースが増えていくのではないか。そうなると、今後はエース区間が「4区」になっていく可能性は高い。
令和の時代は、「花の4区」という流れになっていくのかもしれない。