GWをいかに過ごすか。有意義に、充実した時間を持たねばと焦っている向きには、じっくりアートに触れてみることをおすすめしたい。

映画+アートのドキュメンタリー作品を堪能

 時間にゆとりのある休日は、映画とアートを同時に味わうのはどうか。格好のドキュメンタリー映画が公開中だ。

 まずは「メットガラ ドレスをまとった美術館」。メットとはMET、ニューヨーク・メトロポリタン美術館の通称のこと。同館は5月になると、世界最大級のファッションイベント「メットガラ」を催す。リアーナ、レディ・ガガ、ジャン=ポール・ゴルチエ……。ファッション、エンターテインメント、アート各界のセレブリティが顔をそろえ、饗宴を繰り広げる。名門美術館の威信をかけて催しを成功させようとする人たちの姿をカメラは追いかける。

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 華やかそのものの画面に酔いしれつつ、一大イベントを成し遂げるべく奔走するプロフェッショナルたちの、仕事への熱狂ぶりにも目を奪われる。

©2016 MB Productions, LLC
INFORMATION

「メットガラ ドレスをまとった美術館」
Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他全国公開中

 もう一本、こちらはクールな映像美を堪能できる「Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代」。ロバート・フランクは、20世紀の米国で最も影響力の強かった写真家。全米各地のスナップショットからなる名作写真集『The Americans』は、いかにして生まれたのか。本人へのインタビューを重ねながら、伝説化した写真家の姿に迫る。

 ローリング・ストーンズらの楽曲をバックに流れていく映像は、ロードムービーめいていて飽きさせない。こんなにかっこいいドキュメンタリー映画もあるのかと再認識させられる。

映画「Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代」より
INFORMATION

「Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代」
Bunkamuraル・シネマ他で公開中

銀座でアートと思いがけない出合いを

 いま銀座に足を運ぶと、意外なかたちでアートと出合うことができる。

 訪れたいのは、巨大商業施設としてこの4月にオープンした「GINZA SIX」。新しいデパートなのでは? なぜアートが? と疑問に思うかもしれないが、一歩足を踏み入れればすぐ納得。テナントが並ぶ商業空間の中央部が吹き抜けになっていて、上からカラフルな物体がいくつも吊るされている。白地に赤いドットのついた大きなバルーン。アーティスト草間彌生による、かぼちゃを模した作品だ。

 

 服やアクセサリーなどキラキラ輝くもので埋め尽くされた店内にあっても、草間作品は他のどんなものにも勝るインパクトを持つ。美術館やギャラリーで観るときには気づかない、作品の強烈な個性を体感できる。

 6階には「銀座 蔦屋書店」がある。アート専門店をうたっており、関連本や雑誌がずらり置かれるなか、売り場の中央部分は大きくぽかりと空いている。作品展示スペースとして一等地が確保されていて、現在は写真家・蜷川実花らの作品が並ぶ。書店にいながら実物のアートを観られると、ちょっと得した気分になる。

 せっかく銀座に来たのなら、表通りを離れて細い道へ分け入り、趣ある建築の1階にある「森岡書店 銀座店」にも立ち寄りたい。文字どおり書店なのだけれど、スペースはずいぶん小さい。巨大な蔦屋書店とは、まるっきり趣が異なる。こちらは「一冊の本を売る」ための本屋を標榜する。

 

 期間を決めて、ある一冊の本だけが店内に置かれ、壁面では本とかかわりのある作品展示が繰り広げられる。GWのあいだは、内田美紗の俳句を収めた『鉄砲百合の射程距離』が一冊の本となっている。展示は、収載の句に合わせてセレクトされた写真家・森山大道の作品。親密な空間で相対すると、アートも本もぐっと身近に感じられてくる。

INFORMATION

『鉄砲百合の射程距離』(月曜社)刊行記念・森山大道写真展
4月25日〜5月7日
森岡書店銀座店
東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1F

美術館やギャラリーで「まだ間に合う」展示も

 もちろんアートに触れる場の王道たる美術館やギャラリーを、この機にまとめてまわるのもいい。これまでに文春オンラインでご紹介した展覧会から、まだ観られるものを以下にピックアップ。どれに足を運んでも、充実した気分に浸れること請け合い。

夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 総集編

3月7日〜5月7日

東京都写真美術館

東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

www.topmuseum.jp

草間彌生「わが永遠の魂」

国立新美術館

2月22日〜5月22日

kusama2017.jp

N・S・ハルシャ展 ―チャーミングな旅―

2月4日〜6月11日

森美術館

東京都港区六本木6−10−1 六本木ヒルズ森タワー53階

www.mori.art.museum

「斎藤文夫コレクション浮世絵・神奈川名所めぐり」「リアル(写実)のゆくえ 高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの」

4月15日〜6月11日

平塚市美術館

神奈川県平塚市西八幡1-3-3

http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/

篠田桃紅 昔日の彼方に

3月29日〜5月28日

菊池寛実記念 智美術館

東京都港区虎ノ門4-1-35 西久保ビル

www.musee-tomo.or.jp/

ヴォルス ―路上から宇宙へ―

4月1日〜7月2日

DIC川村記念美術館

千葉県佐倉市坂戸631

http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/