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2017年春の「炎上発言」に学ぶ「失敗の本質」

2017/05/03
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「いじめ」と「福島原発事故」をめぐる忘れてはならない「炎上発言」

岡田優子 横浜市教育委員会教育長
「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」

NHK NEWS WEB 1月20日

福島原発事故で自主避難した生徒に対するいじめ問題でで頭を下げる岡田優子教育長(左から2人目) ©共同通信社

 炎上のスケールはまったく異なるが、記憶しておきたい発言だったので記しておく。東京電力福島第一原子力発電所の事故で、横浜市に自主避難をしていた男子生徒がいじめを受けていた問題。男子生徒は転校直後からばい菌の「菌」をつけて呼ばれ、小学5年生のときには10人ほどの同級生たちにゲームセンターで遊ぶ金として150万円もの大金を払わされていた。

 しかし、いじめを認定するように求められていた横浜市教育委員会の岡田優子教育長は、1月20日に開かれた市議会のこども青少年・教育委員会で「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは疑問がある」と述べ、いじめと認定するのは難しいという考えを示した。横浜市の第三者委員会が昨年11月にまとめた報告書にも「おごりおごられる関係で、いじめとは認定できない」と記されていた。生徒の両親の訴えを無視して、学校も教育委員会も第三者委員会も「いじめではない」と判断していたのだ。その象徴たる岡田教育長の発言は炎上し、「横浜市では子育てをしたくない」という声も相次いだ。

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 横浜市の教育委員会は4月21日に記者会見を開き、適切な対応を怠っていたとして当時の小学校や教育委員会の担当者6人を戒告などの処分にしたと発表。また、横浜市の林文子市長は岡田教育長に文書で厳重注意を行った(NHK NEWS WEB 4月21日)。

 いじめに対してまったく向き合わない姿勢が炎上につながったわけだが、同時に原発事故での自主避難者への対応の冷たさも浮き彫りにした。そのことは次の人の大失言にもつながっている。

今村雅弘 前復興相
「まだ東北で、あっちの方だったから良かった。首都圏に近かったりすると、莫大な、甚大な額になった」

産経新聞 4月25日

なぜこんな発言をしてしまったのか? 今村前復興相 ©時事通信社

 上半期の日本失言・炎上大賞を選ぶとしたら間違いなくこの人、今村雅弘前復興相だ。すでに多数報道されているため詳細は省くが、東日本大震災で被災し、復興を目指す人たちの気持ちを復興庁のトップ自らが踏みにじる失言・暴言だった。

 今村氏はこれまでにも「(自主避難者は)自己責任」「裁判でもなんでもやればいいじゃないか」などの失言を繰り返してきた。東電株を8000株持っていることも注目を集めた。被災者をはじめとする人々から復興相の辞任を求める声が上がったが、スルーされた。なぜか今村復興相をかばう人たちもいた。しかし、今回は誰もかばわなかった。「つい、うっかり口が滑った」のではなく「本音が出た」のが誰の目にも明らかだったからだ。最近は多少炎上しても、人々はすぐに忘れてしまうが、「うるさい!」「出て行け!」と叫んでいたこの人の顔はしばらく忘れないだろう。

 前回失言したときは大臣の座を守り抜いた今村氏だが、今回は失言の現場である自民党のパーティーに居合わせた安倍晋三首相が激怒、即座に謝罪と遺憾の意を表明したため、ついに辞任と相成った。つくづく、なぜこの人を復興庁のトップに据えたのかがわからないのだが、安倍首相が怒らないと辞任には至らないということがわかってしまったのも事実である。そういう意味で、今の政府与党の政治家に一般市民の怒りによる「炎上」は届かないのだ。

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