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将棋連盟フットサル部の蹴り初めにて、佐藤天彦九段からいただいた“お年玉”

将棋連盟フットサル部の蹴り初めにて、佐藤天彦九段からいただいた“お年玉”

こうして将棋界の年末年始は過ぎていった

2020/01/07
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第2部、合わせて五冠の豪華対決

 第2部は、客席参加型の「次の一手名人戦」。渡辺明三冠と永瀬拓矢二冠という、合わせて五冠の豪華な対決となった。

 解説は木村一基王位と杉本昌隆八段のコンビ。できるだけ多くの人に正解してもらいたい思いと、進行の都合もあるため絞っていかなければいけない事情の板挟み。なかなか難易度の高い役回りなのだが、お二人はうまく立ち回っておられた。

「次の一手名人戦」より ©相崎修司

 優しいだけでは生きていけないのが将棋界。途中で解説に参加した藤井七段は、きっとこれから学んでいくことだろう。あれもこれもオールマイティだったら周りはたまらねえや。

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 対局のほうは永瀬さんが受けの強さを発揮して快勝。次の一手名人になったのは埼玉県から来たという女性だった。「勘だけでここまで来てしまった」と謙遜されていたが、なんにせよ名人はえらいのである。それほど強くなくても楽しめる、一番にだってなれるのだから、将棋の楽しみ方は無限大なのである。

1月2日、木曜日。

 Eテレで放映された「棋士が語る! 平成のNHK杯戦名対局」を見る。いきなり中原先生に米長先生、和服姿が超渋くてカッコイイ。村山聖先生、ぷっくりしていてカワイイ。将棋の内容は擦り切れるほど知っているから、目が行くのは棋士の所作や表情ばかり。観る将が増える理由がよく分かる、眼福のひとときであった。

1月4日、土曜日。

 お昼から東陽町の江東区文化センターの「特撰落語名人会」に行く。音楽のライブでは平均年齢を上げることが多いが、落語会はその逆で古参の年配が多い。それでも最近は若い人の姿が多くなってきた気がするのは、将棋界のイベントでも感じることだ。

 開口一番はお正月らしく、三遊亭歌つをの「初天神」。2番手に柳家さん喬師匠の「ねずみ」。さん喬師匠はチューハイのCMなどでおなじみの柳家喬太郎師匠のお師匠さん(師匠、師匠って変な感じですね)で、今年で72歳になる年男。きょうの真打のなかでは一番年上で兄さんのはずだけど……と思っていたら、やっぱり仕掛けがあった。

 続く桃月庵白酒師匠が古典の「富久」。トリの三遊亭白鳥師匠は、その富久を創作落語にアレンジした「富Q」を演じる趣向だったのだ。落語会はテレビではとても出せないようなブラックなネタが結構出てきて、思わずドキッとしてしまうことも。将棋の対局や大盤解説などもそうだが、現場には独特な迫力や楽しさがある。