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 つゆを啜ると出汁がじんわりと利いたやや甘いタイプで埼玉らしい味である。そばの麺は細目でコシもあり食べやすい。

「たぬきそば」600円は少し甘めのおつゆがいい

 その時、いいアイデアが頭に浮かんだ。

「これは浦高生でも気が付かないだろうな……」

「もやしそば(らーめん)」のスープが残っていたので、そこに日本そばを留学してつけ麺風にして食べてみると、これがまた絶品だった。

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「もやしそば」のつゆに「たぬきそば」のそばを留学して食べてみる。うまい

『これは浦高生でも気が付かないだろうな』と一瞬ほくそ笑んだ。しかし、よく考えると「仙龍」で自作メニューを作ろうと思えば果てしなく膨大な数ができるわけである。

「麻婆豆腐」を頼んで「かけそば」にのせれば「麻婆そば」だし、「焼餃子」を頼んで「かけそば」にのせれば「焼餃子そば」である。この果てしなく緩い感じが「仙龍」のダイバーシティー的人気の秘密なのかもしれない。

すべて食べて、コーヒーまでいただいた

 そうこうしているうちに、12時30分が過ぎて、浦高生であろう学生たちが入店してきた。そしてよく見ていると、「もりそば」(500円)を注文する生徒が2人もいたのだ。

 先生以外にも日本そばは食べられているのか。しかし、育ち盛りの高校生で昼にもりそばとは大人みたいでシャレオツだ。大衆そば的に大いに感心したわけである。

「今日は2階で浦高の柔道部のOB会があるから満員ね」

 ミッションを完了し、帰ろうとしたら大女将が大声で次のように教えてくれた。

「今日は2階で浦高の柔道部のOB会があるから満員ね。夜来ちゃだめだよ」

文武両道の浦和高校にとって「仙龍」はなくてはならないお店だった

 浦高生、先生、OBそして父兄にも愛されている「仙龍」のような店はめったにないと思う。また訪問しよう。大女将お元気で。

※3月16日未明の火事により、仙龍は全焼し、2人の遺体が発見されました。店主の伊藤みや子様とその弟様の安否がいまだ分かっていません。あの暖かいお店の雰囲気がなくなってしまい、信じられません。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

仙龍

住所 埼玉県さいたま市浦和区領家5-5-1

営業時間 月~火、木~日
     11:00~15:00、
     17:00~22:00(L.O.21:00)

 定休日 水曜日