2019年ももうすぐ終わる。今年の大衆そば・立ち食いそば界の動向をみると幾つか大きなニュースがあった。1年を振り返り、清水寺風に漢字1文字で表すとしたら何になるだろうか考えてみることにした。

「日本そばとラーメンスープの融合」

 まず今年のニュースとして特徴的なことは、「日本そばとラーメンスープの融合が一気に進んだ」ことである。多様な麺とつゆ・スープの組み合わせの面白さが浸透してきたともいえる。

 中野にある「肉そばNAMIKI」の「肉そば」は、さば節、焼あご、あじ節、宗田鰹節をふんだんに使った魚系の出汁に、豚皮を長時間煮込んでとったスープを併せてつゆをつくり、平打ちのそばと合わせる。この組み合わせが実に新鮮だ。

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「名代 富士そば」では「肉骨茶(バクテー)そば」が話題になっている。にんにくとコショウが効いた豚スープと日本そばを合わせたもので、シンガポールのローカルフード肉骨茶(バクテー)をアレンジしたという。この人気は2020年以降も続くと予想する。

中野にある「肉そばNAMIKI」の「肉そば」

「立ち食いそばの名店が次々に閉店」の一方で……

 寂しいニュースもいくつかあった。それは、「閉店した立ち食いそば屋の名店が多かった」ことである。

 伊東駅の「祇園」は3月、新橋駅近くの「ポンヌッフ」は4月、新宿駅東南口すぐの「千曲そば」は8月にそれぞれ静かに閉店していった。

 虎ノ門の「港屋」は2月に突然閉店した。オーナーの菊地さんの「どうやら寿命が来たようです」との貼り紙は衝撃的で、多くのファンが駆け付けた。

 もう1つの今年の大きなニュースは、「経営が継代された立ち食いそば屋が多かった」ことである。

 池尻大橋にあった、「ホーチャン2号店」は、ホーチャンの経営会社から従業員だったイケメンの少年サッカー監督、橋野さんに継代され、今年4月「池尻蕎麦」としてスタートした。 

立ちそば界で1番のニュース「水道橋の名店が……」

 そして、その中で今年のもっとも大きなニュースは、「水道橋の『とんがらし』の味が、高齢でリタイアを宣言した佐藤さんから、公募で選ばれた経営者に店が引き継がれたこと」だと思う。

 旧「とんがらし」は1995年頃、幼なじみの佐藤夫妻が開業した立ち食いそば屋で、注文してからてんぷらを揚げる店として人気だった。

 2018年末頃、二人合わせて150歳を超える今が潮時だと、後継者を募集することを発表した。そこに応募したのが今の店主の樋口さんだった。

 樋口さんは弟子入りして佐藤夫妻からてんぷら、つゆなどのあらゆる作り方を伝授されて店を引き継ぎ、5月に再開を果たしたという経緯である。

 慌ただしい12月中旬、新生した「とんがらし」を訪問してみた。5月に再開してからだいぶ落ち着いてきたようだ。