ついに、彼女の番が回ってくるかもしれない。子役時代からキャリアを積みながら、重要な賞にはあまり縁がないままできたスカーレット・ヨハンソンが、今年は大健闘しているのだ。しかも、作品は1本でなく2本。ひとつはNetflixの『マリッジ・ストーリー』で、もうひとつは1月17日に日本公開となった『ジョジョ・ラビット』だ。どちらも母親役だが、第二次大戦中のドイツを舞台にした『ジョジョ~』の役は、かなりユニーク。幼い息子がナチをアイドル視する中、母親はこっそりと家の中にユダヤ人の女の子を匿っているという設定なのである。息子の想像に出てくるヒトラーを演じるのが、この映画の監督であるタイカ・ワイティティだというのもおもしろいが、この脚本を初めて彼女に勧めたのが『アベンジャーズ』で共演したクリス・ヘムズワースだったというのも、これまた意外だ。
「この脚本は最高だと、クリスは大絶賛していたの。それからしばらくして、私の担当エージェントからも、これは絶対読むべきだと勧められたのよ。読んでみたら、本当に素敵な脚本だった。途中で涙が出てきたわ。私にとって、それはやるべきだというサインなのよね」
タイトルのジョジョは、息子の名前。“ラビット”は、弱虫だとばかにされ、つけられたニックネームだ。そんな息子を守りつつも、彼女は、自分たちの置かれた世の中の現実を見せようとする。
「彼女たちは、いつも死のそばにいる。この子を一緒に育てていた彼女の夫も、奪われてしまった。そのことを思うと、彼女は悲しくてたまらない。そんな中でも、彼女は、できるだけ家の中を明るく、平和に保とうとする。同時に、息子を完全に現実から遠ざけるべきではないともわかっているの。最悪のことが本当に起こってしまった場合に備えて、わが子にある程度の現実を教えておくのは、親としての責任だと私も思う」
彼女自身も、5歳の娘をもつシングルマザー。娘の父は、2番目の夫だったフランス人ジャーナリストだ。
「仕事をしていない時は、いつも娘と一緒に過ごすわ。その時間を大切に思うから、キャリアと私生活のバランスを保とうとしている。その一方で、ママは自分の夢を一生懸命追いかけているのだということも、見せたいと思っているの。娘には、リスクを負うことを恐れないでと教えたい。失敗してもいいんだ、失敗しても終わりではないのだということを」
そんな彼女の次の“夢”は、マーベルの超大作『ブラック・ウィドウ』。長年演じてきたこのキャラクターが主役になる時が、ついにやってきた。エグゼクティブ・プロデューサーも兼任する彼女は、「映画を仕上げているところで、今はこのことで頭がいっぱい」とのこと。「ほかのことに考えが回らないのはなかなか良いものよ」とも言う。賞レースの結果に一喜一憂しがちなこの時期、こういう何かを持っておくのは、最高に有効な手段かも?
Scarlett Johansson/1984年ニューヨーク生まれ。8歳で舞台デビュー。代表作に『ロスト・イン・トランスレーション』『アベンジャーズ』『ゴースト・イン・ザ・シェル』『犬ヶ島』など。
INFORMATION
映画『ジョジョ・ラビット』
http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/