世の中でいちばん面白いものは「内輪受け」だ。

 自分の子供の学芸会はどんな映画よりも視線は釘付けになるし、友達の失敗談は、洗練された漫才よりもスベらない。学生時代なら、先生のモノマネ上手が、至芸の持ち主として人気者になる。

 だったら、そんな「先生のモノマネ」という内輪芸を、プロのモノマネ芸人がやったらどうなるか。それを検証したのが『水曜日のダウンタウン』での「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」だ。神奈月、エハラマサヒロ、ホリといった一流のモノマネ芸人が、本人、生徒や同僚へ取材し、実際の授業風景も見学。一人ひとりの特徴を掴んでいく。少し見ただけで、「この人は語尾があがる」だとか、言い回しのクセをすぐに見破ってしまうのは流石。プロの現場だ。

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 いよいよ本番。芸人登場直後こそ戸惑っていた生徒たちだが、先生の口癖を発した瞬間、教室が揺れるような爆笑。その後、別の先生に扮した芸人たちも出てくると、悲鳴にも似た笑いまで起こった。まさに「死ぬほど」ウケたのだ。中には笑いすぎて号泣してしまう生徒も。それを見ている僕も、なんだか青春時代の残滓のようなものが刺激されてか、謎の涙が出てくる。モノマネ芸人たちも充実感いっぱい。先生も生徒たちも笑顔に包まれた。この番組らしからぬ、まさかの「ハートフル」な企画に着地したのだ。

「たまにはちょっとこういう感動的なのも(いい)。BPOに狙われてるんで」

 そう松本人志が言うように、普段この番組は過激で悪意に満ちた笑いが多く、クレームと紙一重のところで戦っている。一方で、過去にギャラクシー賞を獲ったりもしている。今回の企画もその有力候補に挙げられるだろう。

ダウンタウン ©共同通信社

 しかし、それで終わらないのがこの番組。続いて検証されたのが「ツッコミ、強ければ強いほど面白い説」。アメフトのタックルや警察犬などの強い“ツッコミ”を検証した挙句、最後はデスマッチレスラーが登場。パイプ椅子で思い切り叩いたり、蛍光灯で殴ったり(この時画面は「コンプラ」の表示とともにモザイク処理)やりたい放題。さらに別の検証では「ハンマーカンマー」とひたすら連呼するバカバカしい替え歌も登場した。

 ハートフルとバイオレンスとシュールが同居し、BPOからもギャラクシー賞からも注目される。あらゆる種類の「面白い」が詰まっていた。

▼『水曜日のダウンタウン』
TBS 水 21:57~22:54