[ロンドン発]新型コロナウイルスによる肺炎が中国を中心に世界的に広がり、2月1日、中国の国家衛生健康委員会の発表では感染者が1万1000人を超え、死者が中国で259人も出ている問題で、世界保健機関(WHO)は1月30日、スイス・ジュネーブにある本部で3回目の緊急委員会を開き、緊急事態を宣言した。
「大流行をコントロールする中国の能力」を評価
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は新型コロナウイルスの感染拡大について「前例のない大流行」と危機感を表し、「恐怖ではなく事実の時、ウワサではなく科学を信じる時、烙印を押すのではなく連帯する時だ」と国際協力を呼びかけた。
感染拡大の防止に全力で取り組む中国について「もし並外れた対策が取られていなかったら、国外でもっと感染が拡大し、おそらく死者が出ていただろう。大流行をコントロールする中国の能力に信任を置いている」と評価した。
テドロス事務局長は、中国が大流行を探知し、新型コロナウイルスを分離、ゲノムを配列決定してWHOと共有したスピードに言及した上で、「最前線で休む暇もなく治療に当たっている何千人もの勇敢な医療専門家や看護師に心から敬意を表したい」と称賛した。
習近平国家主席は中国の威信をかけ、肺炎が発生した湖北省武漢市を事実上「閉鎖」して、突貫工事で新型コロナウイルスの感染者を隔離する病院を建設するなど感染拡大の防止に取り組んでいる。
しかし中国のソーシャルメディアでは、限界に達した女性医療従事者が「もう、これ以上できない」と泣き叫ぶ動画が拡散している。自宅から出ないようアドバイスされた武漢市の市民が窓から大声で励まし合ったり、士気を高めるため歌ったりする様子を撮影した動画もある。
WHOが緊急事態を宣言したのは中国以外で感染が拡大しているためで、テドロス事務局長は「医療システムが中国のように強くない国で感染が拡大するのを懸念している。われわれは力を合わせてこうした国々での感染拡大の防止に努めなければならない」と強調した。