数千万人を“集団隔離” 極端な拡大防止策の効果は
習主席は武漢市、隣接する黄岡市などへの交通を遮断し、数千万人を“集団隔離”するという極端な拡大防止策をとった。公衆衛生の専門家はこうした方法が公衆衛生対策に役立つかどうか疑問視している。輸送を停止すると医薬品が不足し、患者が診断を受けるのが難しくなるからだ。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の報告はテドロス事務局長の説明と大きく食い違っている。
HRWは「当初、感染例を過少報告、重症度を軽視し、人から人への感染の可能性を却下したため、中国当局の対応は遅れた。 1月中旬以降、積極的なアプローチを取り、武漢市とその周辺から他地域への感染を制限するとして5600万人を隔離した」と指摘する。
当局は「ウワサ」を広げたとして感染者が治療を受ける病院の医師ら8人を取り調べ、新型コロナウイルス流行に関するオンライン討論を検閲、メディアの取材や報道を制限したため、住民は医療への適切なアクセスを確保できなかった。
「この地域には問題がない」 追い払われたBBCのジャーナリスト
HRWの報告によると、医師は「未知の病気」についてソーシャルメディアで警鐘を鳴らそうとしたが、公安から「ウワサ話」を広めるなと誓約書に署名することを求められた。感染者を治療した後、この医師は肺炎の症状で入院し、現在、重篤な状態だという。
感染者を治療する医療関係者はメディアには話さないよう口止めされている。英BBC放送のジャーナリストは「この地域には問題がない。滞在する必要はない」と公安に追い払われた。
封鎖された武漢市とその周辺の住民5600万人の多くは医療や生活必需品にアクセスしにくくなったと訴えている。産婦人科の診察を受けるため長距離を歩かなければならなかった妊婦もいる。移動の自由を大幅に制限する“集団隔離”がどの法律に基づいて行われているのか定かではない。
湖北省以外のホテルでは、武漢市や湖北省からの旅行者や車を拒否する差別的な動きも出てきている。