昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/02/01

 アフリカからの渡航者が多く、世界に版図を広げた歴史を持つイギリスのNHS(国民医療サービス)の感染症対策は確立されている。肺炎が疑われる急患については旅行履歴を確認、感染が疑われる患者については隔離して検査を急ぐ。感染が確認されたら、空気感染する重症の感染症に対応できる指定病院に搬送するよう注意を呼びかけている。

 特定、隔離、非接触を徹底し、専門家の助言を求めるのが原則だ。NHS関係者の1人は筆者の取材にこう語る。

「新型コロナウイルスの感染力は強いが、致死率はそれほど高くない。しかしお年寄りや合併症を持っている人が感染するとリスクが高まる。ワクチンや治療法が見つかるまで、今は隔離して一般市民の間にパニックが起こるのを防いでいる。隔離期間は14日間という日数が特に強調されている」

「中国籍の妻は一緒に来ることができない」

 1月31日に欧州連合(EU)から離脱したジョンソン英政権では、英空軍や陸軍の医療チームがジャンボジェット機をチャーターして武漢市に乗り込み、英国民150人、EU市民ら計200人の救出作戦を実施。

 中国人女性と結婚して武漢市で暮らしているイギリス人男性はBBCに対して「飛行機でイギリスに帰れるのは私と私の母だけで、中国籍の妻は一緒に来ることができない」と打ち明けた。

 また別の男性は「中国籍の妻は帰ることはできない。1カ月の子供の扱いがどうなるか分からない」と不安をのぞかせた。

©AFP/AFLO

 中国人は出国できないという原則とイギリス人の家族と一緒なら出国できるという情報が入り乱れ、搭乗直前まで混乱。「生き別れになるなら」と一時、家族とともに武漢市に残る覚悟を決めた人もいたが、最終的に一緒に帰国できることになったという。

 出発時間を3時間遅らせたものの、集合時間に間に合わず結局、搭乗できたのはイギリス人83人と外国人27人だけ。チャーター機は31日午後、英南東部のブライズ・ノートン空軍基地に到着し、今後2週間、イギリス人はリバプールの医療施設に移されて隔離された。ジョンソン政権は救出作戦の再度実施を検討している。

 英インペリアル・カレッジ・ロンドン医学部のニール・ファーガソン教授(公衆衛生)はこう語る。

「ワクチンや治療法はまだない。対策には迅速な診断と感染者の隔離、追跡、コミュニティーへの感染の削減が含まれる。人から人への感染の証拠を考えると、大流行を制御するには病院や診療所などでの迅速な症例検出の強化が不可欠になる。

 人々にはまだ新型コロナウイルスの免疫がないため、速く広がる恐れがある。新型コロナウイルスの致死率は2%(3~5%という説もある)とみられる。人から人への感染がさらに広がっていくのか、重症度の広がりがどうなのか不確実だ」

この記事の写真(5枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー