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パチンコ屋はちゃんとしたらダメ!「ザル」だからこそ儲かる摩訶不思議な世界

「たいして勝てません」となぜ言えない?――『パチンコ滅亡論』(扶桑社)より #2

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パチンコ業界も台も打ち手も居場所が失われてきてる

ヤング 勝てる台、オイシイ台も今や店がそろばんずくでやってるからね。昔は店の裏をかく、隙を突いて勝つ、そこが腕の見せどころだったんだけど、今は店が勝たせようとして台を作ってくれない限り、客は運勝ちを狙うしかない。

大崎 だからそういう意味で夢は潰えてしまったわけで、そりゃ打ち手としてはシラける気持ちが出てきてもしょうがない。雑でテキトーだからよかった部分があったんだけど、きっちりしたおかげで遊びの部分がなくなっちゃった。ふんわりした雑な部分にパチンコ客ってのは住み着いて、なんとかやりくりしようみたいなところが文化だったわけだけど、見事になくなっちゃった。

ヤング いわゆるグローバリゼーションの席巻と、徹底して無駄を排除する経営の合理化。産業として成熟した、と好意的に見ることも可能だけどさ。

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大崎 ハッキリ、キッチリしていこうという世界的な潮流の中で、パチンコ業界も台も打ち手も居場所が失われてきてるってことだよ。

業界に明るい未来はあるのか ©iStock.com

ヤング そして遊技人口の減少(*35)。これも企業の宿命なんだけど、客が減ろうが何しようが、とにかく前の年より「成長」してないと企業としてはダメっていうルールでしょ。だから、客一人あたりから巻き上げる金額を増やして、どうにか体裁を保ってきた。で、これを延々繰り返して、タコが自分の足食ってるようなもんだもん。当然客は白けて、さらに遊技人口が減ることになる。

*35 遊技人口の減少
90年代前半に3000万人の参加人口があったものが17年には1000万人を割ってしまい、参加人口で見てみるとその規模は3分の1以下になってしまった。ただし、売上額は当時と比べて3分の1になっていないので、1人当たりの負担額(負け額)が増えていってることがわかる

大崎 年金構造と同じで、少数の人間が支えなあかんとなれば一人頭の負担が増えるのは当たり前だから。

巨大化に伴って生じる制度崩壊

ヤング パチンコ業界に限った話ではないんだけど、ホールもメーカーも商店から企業になっちゃったことで、とにかく成長が最優先になった。それはもう資本主義社会の病というか、ハッキリ言えば毒なんだよ。「今日一日暮らせたからいいじゃん」ではなく、「昨対」で減っていたらそれは死ですよという思想だから。

大崎 ちゃんとしたら一気に不都合が出てくるって、やっぱり、おもしろい業界だよね。雑で、どんぶり勘定でやってたときは皆ハッピーだったのに、キッチリした途端にいろんな不都合が出てくるっていう……。こんな業界、他にある?

ヤング 芸能界(笑)。

大崎 あっ(笑)。だからやっぱりね、パチンコ屋はちゃんとしたらダメなんだよ。ちゃんとした途端になんか生きづらくなるって、ある意味、最高じゃんね(笑)。

パチンコ滅亡論

大崎 一万発

扶桑社

2019年12月20日 発売

パチンコ屋はちゃんとしたらダメ!「ザル」だからこそ儲かる摩訶不思議な世界

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