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▼いつ起きているのか

 現在は起きていません。2002年の1月頃から、中国の広東省で不思議な肺炎が流行しているという報告が「ProMED」などでされるようになりました。当時ニューヨークにいた私は、「へえ」と思ってそうした報告を読んでいるだけでした。1994年に作られた「ProMED」はSARSの報告で一躍有名になったのでした(Yu VL, Madoff LC. ProMED-mail: An Early Warning System for Emerging Diseases. Clin Infect Dis. 2004 Jul 15;B39 [2] :227-32)。

 その後、流行は中国各地(北京含む)、香港、台湾、シンガポール、ベトナムと広がっていきました。カナダやヨーロッパでも患者が発生しました。

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 しかし、2003年の夏になって患者はだんだん減り始め、2004年にはどこかにいなくなってしまいました。どこにいったんでしょうね。

▼どこで起きているのか

 現在は流行が確認されていません。

SARSの死者は774人、死亡率は約10%

▼何人に起きているか

 2002~2003年の流行では、8098人の患者がSARSと診断されました。

▼死亡者はそのうち何人か

 774人。10%近くの死亡率です。

▼臨床症状は

「呼吸器症候群」と名付けられていることから分かるように、呼吸器症状が主です。すなわち、咳、喉の痛み、発熱や筋肉痛、全身倦怠感とともに起こります。インフルエンザによく似た症状です。後に息切れが起きると、肺炎に近い病態になります。

▼感染経路は

 SARSの最大の問題点は、ヒト-ヒト感染することです。もともとはハクビシンのような動物から、なんらかの形で人に感染したと考えられますが、その後は、人との接触や咳、くしゃみなどで感染します(接触感染、飛沫感染)。また、香港ではマンションの下水を介して異なる階に住んでいる住人に感染が起きたりもしました。

SARS大流行の際、封鎖された北京大学病院。食料の野菜が運び込まれている ©AFLO

▼潜伏期間は

 2~10日です。

▼感染期間は

 はっきりとは分かっていません。最大では発症から21日くらいと言われていますが、だいたい10日くらいと考えられています。当時私はSARSを「10の病気」と覚えていました。死亡率10%、潜伏期間最大10日、感染期間発症後10日、と。

▼日本で、あるいは日本の特定の地域におよぼす影響はあるのか。あるとすればどのくらいか

 今後、いつどのような形でSARSが再度流行するのかについては全く分かりません。2002~2003年の流行では、日本国内のSARS発症はありませんでしたが、あれは単に「ラッキーだったから」と私は思っています。

▼診断方法は

 喀痰のPCR(遺伝子検査)で診断するのが一番よくあるやり方です。