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 2017年の観客数が多い国を順に並べると、アメリカ・カナダ、韓国、フランス、日本、イギリス、ドイツ、オーストラリアとなるのだが、観客数を人口で割った国民1人当たりの映画館での年間鑑賞本数は、韓国の4.3回が最も多く、日本は最下位の1.4回である。それが今の日本映画界における現状。商売としては成立しているのかもしれないが、同時に人々の芸術を追い求める心も養っていかなければ、映画人口の母数自体は増えていかない。

 

どちらの要素も兼ね備えた映画が生まれやすい環境を

『新聞記者』が素晴らしい作品であることは間違いないのだが、過去の受賞作品を考えると、日本アカデミー賞らしからぬ選出に違和感を覚えた人もいると思う。それを前向きに「変化」と受け止めることもできなくはない。

 ただ、観る者の心を強く突き動かすことのできる映画、圧倒的な集客や興行収入を誇る映画、どちらの要素も兼ね備えた映画が生まれやすい環境を確立させられない限り、日本映画界にとって希望と可能性に満ち溢れた明るい未来は訪れないだろうと強く思う。

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 日本アカデミー賞でも数々の賞を受賞され、2018年にこの世を去った樹木希林さんは、第31回の受賞スピーチでこんな言葉を残している。

「この賞が、名実ともに素晴らしい賞になっていくことを願っています」