負けても腐らずにいれば地力がつく
――豊島さんはタイトルを期待されながらも取れなかった時期がありました。そのような頃にアドバイスなどはされましたか。
桐山 まったくしていません。自分の経験として、負けても腐らずにいれば、大舞台を数多く踏むことで地力がつきます。いつか花が咲くだろうと信じていました。
――和服の着用など、盤外でのアドバイスはどうでしょうか。
桐山 そちらも特には言わなかったですね。体に気をつけるようにというくらいです。私はタイトル戦の対局前日に体を壊した経験があるので。枕が変わったら寝られないタイプなんですよ。
――ではタイトル戦だけではなく、普段の対局でも東京遠征が大変だったのでは?
桐山 ええ、大阪のほうが良いですね(笑)。そしてタイトル戦だと3~4日がかりなので、寝不足が続いたのがつらかったです。
――改めて、お弟子さんの活躍に関してお願いします。
桐山 そういう棋士を弟子に持てたのはありがたいですね。これからもますます活躍してほしい。弟子の将棋はタイトル戦だけでなく、中継があれば自宅のパソコンで見ています。
――桐山先生は長年パソコンを積極的に使っているという話を伺いました。
桐山 最初は棋譜データベースの活用ですね。もう25年ほど前でしょうか。棋譜データの入ったフロッピーディスクを使って、モニターに手順が再現されるという時代です。関西は淡路さん(仁茂九段)がそちらの専門家なので、彼に色々聞きました。そしてネット中継が始まって観戦をするようになり、将棋ソフトも強くなってから使っています。こちらはここ7~8年でしょうか。
――ソフトはどのようなことに使われていますか。
桐山 私が使っているのは市販のソフトですが、次の一手を作成するときの検討用が最初ですね。これは重宝します。そしてある局面についてソフトがどのような順を指すかということも見ています。ソフトの手順については、豊島竜王・名人に多少聞いたりもします。
スポーツジムに週2回ほど通っています
――桐山先生の現役生活は54年を数えますが、長年の活躍には健康が不可欠です。健康・体力維持のために、どのようなことを行われていますか。
桐山 基本的なことを心掛けています。睡眠をとり、規則正しい生活、食事、適度な運動ですね。
――運動とは?
桐山 朝起きたら10分ほど、我流の体操をやります。そして、スポーツジムに週2回ほど通っています。こちらでは主にストレッチを1時間~1時間半ほどやっていますね。深夜に及ぶ対局のために持久力が求められますが、そのために姿勢をよくすることを心掛けています。あと、私は酒が飲めないので、その辺が幸いしたとも言えます。
――昔は現在と比較して、お酒による付き合いが多かったのではないかと拝察します。
桐山 若いころは付き合いで、薄い水割り1杯を2時間かけて飲んだりもしたが、ダメでしたね。タイトル戦でも1度だけ無理して飲んだら、えらくしんどくなってやめました。ただ、飲めないと言い続けたら、強要されることはありませんでした。