売れないときは「声がデカくなる」
つまり、半分は意識的に、半分は自然と作り上げられた声だったのだ。元の声がどんなだったか今となっては想像もつかないが、声自体はもともと大きかったのだろうか。
「あー、わりと声は出るほうではありましたね。昔は『声がデカすぎる』と怒られたこともありました。今はそんなに大声出すこともないですけど。50メートル、100メートル先のお客さんを呼ぶわけでもないですから。店先を通ったお客さんに声が届けばいいぐらいなんで、そんなに大きい声は出さないといえば出さない。まあ、たまに売れないときとか、必死こいて声がデカくなってることはありますけど(笑)」
なるほど、そのへんはやはり素質があったということだろう。筆者のようにこもりがちな声の人間がいくら頑張っても、ああいう張りのあるダミ声にはならない気がする。
ちなみに、その声になるまでにどのくらいかかりました?
「うーん、どうかな。7~8年ぐらいはかかってますかね。それまでは店のときの声とプライベートの声ってのはあくまでも別だったんですけど、いつのまにかプライベートでもこの声になったという。それがやっぱり7~8年してからだと思います」
真似から入って本物になるのに7~8年とは、一種の伝統芸能のような……。
「いやー、僕らはそこまでは言えないですよね。別に声で食ってる人間じゃないんで、芸というのとはまた違うでしょうけど、ただ、この商売に関してはやっぱり多少はこの声のメリットがあるとは思います。まあ、デメリットも多少はあるんですけど」
デメリットというと?
「仕事はいいんですけど、一般的な生活の中では『聞きづらい』と言われることはありますね(笑)」