「まずMERS(マーズ、中東呼吸器症候群、2015年)の経験を抜きにして韓国の防疫は語れません。マーズの時には感染者数の増加に検査が追いつかなかった。このマーズの経験を教訓にして、民間が開発した診断キットを早く承認できるよう、疾病管理本部が制度を作っていたことが今回の早い対応につながった」
民間企業が開発した検査用の診断キットを緊急事態に備えていち早く承認する「緊急使用承認制度」を導入したのは2017年だったという。
専門家による毎日のブリーフィング
現在、新型コロナ対策で事実上のコントロールタワーになっている疾病管理本部は保健福祉省傘下で、疾病管理に関連する研究開発を担う機関だ。
1月20日に韓国で初めて新型コロナウイルス感染者が確認された日から毎日、その状況についてブリーフィング(説明)も行っている。このブリーフィングは国民の安心材料のひとつになっており、登壇する予防医学博士でもある鄭銀敬本部長の目のクマが日に日に濃くなって、白髪がどんどん広がっていくのを一時はみな心配していたものだ。
週刊誌『時事IN』4月6日号に、新型コロナウイルス対策における疾病管理本部の動きを詳細にレポートした記事が掲載された。以下、要点箇所のみ抜粋する。
〈1月10日、疾病管理本部は、2019年12月末から中国・武漢で報告された正体不明の集団肺炎について、専門家からなる感染病危機対策専門委員会を招集。そこで韓国流入の可能性が高いとし、「ワクチンも治療剤もない状況で、感染者と死亡者数を抑えられる唯一の手段は防疫」と判断。
1月13日、(新型コロナウイルス)検査法の開発に着手することを発表。
1月末、民間試薬業者を集めて、感染病分析センター(疾病管理本部傘下)と大韓診断検査医学会が、開発した診断試薬のプロトコルを公開し、診断キット開発を督励。
2月初め、民間企業が開発した診断キットの緊急使用が承認され、民間の検査機関は110カ所増に〉
ジカウイルス感染症で診断キットの性能が上がった
前出の元疾病管理本部関係者は言う。
「ジカウイルス感染症(2019年)では、民間が開発した診断キットを実際に疾病管理本部がテストもしていた。この時の経験は韓国内の診断キットの性能を上げるのによいテストケースになったといわれている」