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 記事によれば、1日に行う検査は、公共では感染病分析センターなどで2000件、民間では病院や受託機関で2万から2万5000件ほどだという。また、陽性か陰性かの検査を実施する医師も1日6回、検査器を回し、3時間ほどで検査結果を出していると話している(6時間ほどが平均ともいわれる)。早くから診断キット開発に民間企業が参入できる道を切り開いたこと、そして、医師のフル稼働が今回の大規模な検査を可能にしたことが分かる。

韓国人が考える6つの「感染抑制の理由」

「マスク曜日制を可能にしたマイナンバー(住民番号)制度、国民皆保険制度、医療関係者の献身、怖ろしい速さの通信網、残業に慣れている公務員、使いやすい警察や軍のマンパワー」。これは、SNSで話題になっている韓国が感染を抑制できている条件だ。

 国民皆保険や医療関係者の献身、残業に慣れている公務員などは日本も同じだろうが、韓国のマイナンバー制度は日本のものとは性格が異なる。韓国のマイナンバーには、医療保険やクレジットカード、パスポートなどほとんどが紐付きになっていて、「マスク曜日制」実施のため使用しているほか、行動経路をたどるのにも使われている。

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 韓国では感染者がでると、区庁などの疫学調査員が聞き取りを行い、曖昧な部分はマイナンバーに紐付いているクレジットカード情報や携帯の端末情報により追跡しているという。そこで確保した行動経路情報はそれぞれの区から住民の携帯にメッセージが入るようになっている。

韓国のウォークスルー検査 ©AFP/アフロ

 情報はもちろん匿名だが、どこか生々しい。日本では人権問題として議論されるところだろう。しかし、韓国の場合はマイナンバーが生活にあまりにも浸透していて、「個人情報がしっかりと管理されるならば」という前提つきで受け入れられている。マイナンバーに拒否感を持っている人には会ったことがない。

 韓国のマイナンバー制度は、朴正熙元大統領が北朝鮮の工作員が青瓦台を襲撃した事件を機にスパイを洗い出す目的で1968年に施行され、当時は人権侵害や国民を管理するという観点から廃止することも議論されたが、今は、行政サービスやさまざまなものが紐付けられており、韓国社会で生活する上では切っても切れない存在になっている。

 IT大国といわれる韓国はインターネットのインフラも充実していて、在宅勤務できる環境も整っているといわれ、また、警察や軍関係者もコロナ対策ではフル稼働している。警察関係者は海外からの帰国者の輸送などを行い、軍関係者はマスク製造に投入され、また、コロナ感染を怖れて献血量が不足し始めると、4万9000人の軍関係者が志願して2000万cc近い献血を行ったと伝えられた。この献血量は韓国全国で必要とする9日ぶんに相当する。